年輪を数えてタイムトリップ!<br/>「小江戸」川越の鎮守の森を歩く
公開日2021年08月31日/更新日2021年10月15日

年輪を数えてタイムトリップ!
「小江戸」川越の鎮守の森を歩く

体験する
歴史・文化を感じる
埼玉県川越市

「小江戸」と呼ばれ、蔵造りの建物が軒を連ねる埼玉県川越市。中心地から少し足を伸ばすと、1,000年もの歴史を持つ神社仏閣、農家とその暮らしを支える里山があり、自然と歴史、文化が調和した地域であることがわかります。

今回は、同市内在住の森林インストラクター・𠮷田裕之さんとともに、川越の中心地からほど近い天台宗の寺院、「川越大師 喜多院」を散策。境内の木々から長い年月を感じながら、タイムトリップするようなひとときを過ごしてきました。

“もう1つの小江戸”が楽しめる散策コースへ!

「川越の中心地を観光するのも楽しいのですが、ほかにもお子さんと歩いてほしい場所があるんですよ」

今回、親子向けにちょっと意外な川越の歩き方を教えてくださるのは、一般社団法人全国森林レクリエーション協会の認定・森林インストラクターの𠮷田裕之さん。森林インストラクターとは、森林を利用する人たちに森林や林業に関する知識や技術を伝え、森の案内や森林内での野外活動を行う「森の案内人」です。

学校における環境学習の支援や、親子向けに「川越探検ツアー」のガイドもされている𠮷田さんに、一般的な川越観光では訪れない穴場スポットや、ひと味違った楽しみ方を教えていただきました!

立派な木々と重要文化財に歴史を感じる「喜多院エリア」へ

「多宝塔」は「喜多院」のシンボル的存在。春になると桜とのコントラストが見事です
「多宝塔」は「喜多院」のシンボル的存在。春になると桜とのコントラストが見事です

𠮷田さんとともに訪れたのは、蔵造りの町並みで知られる一番街から徒歩20分ほどの「喜多院」周辺エリア。

川越大師として親しまれる「喜多院」は、平安時代(830年)に建てられ、かつては関東天台宗の総本山だった由緒あるお寺。江戸幕府とのゆかりも深く、江戸城から移築された建造物や徳川家康公を祀る「仙波東照宮」など、川越が誇る重要文化財の宝庫でもあります。

門をくぐれば別世界!気持ちも気温も切り替わる

「山門」は喜多院に残る最古の建造物。国指定の重要文化財です
「山門」は喜多院に残る最古の建造物。国指定の重要文化財です

敷地内に駐車場はなく、境内の北西側に有料の指定駐車場(明星駐車場)があります。そこに車を停め、「山門」から境内へ。一歩足を踏み入れた瞬間、空気の流れがスッと変わったのを感じます。

この日の最高気温は約37度。でも、木々が茂る森に入ったとたん、体感気温が一気に3度くらい下がった気がしました。

「木は葉っぱに必要な養分と水を土から運び、気孔から水分をシャワーのように出しています。だから涼しいんですよ」(𠮷田さん)

踏みしめる砂利の音が気持ちよく、心が洗われるような時が流れます。

人が住む場所には社寺ができ、まっすぐな木に神が宿る

「イチョウはメタセコイヤと同じく、古代から存在していた生きた化石なんですよ」
「イチョウはメタセコイヤと同じく、古代から存在していた生きた化石なんですよ」


室町時代から約500年続く城下町として発展してきた川越の町。

「地形的には荒川水系の川によって作られた自然丘陵地です。周囲には、川島町や富士見市など、河川によって堆積した肥沃な土で耕作を行う地域があり、川越に住む人たちの食を支えてきました」(𠮷田さん)

例年春に開催される「小江戸川越春まつり」での乗舟体験の様子
例年春に開催される「小江戸川越春まつり」での乗舟体験の様子

近世には、近郊や領内で穫れた農作物を新河岸川(しんがしがわ)の舟運(しゅううん)で江戸まで運び、「江戸の台所」と呼ばれて繁栄しました。

「人が住む土地には社寺ができます。そこでは神様がおなりになる、つまりカミナリ=雷が落ちやすい、まっすぐな木が御神木(ごしんぼく)とされたんです。例えば、『まっすぐな木』を語源とする杉も、御神木としてよく見られる木の1つですね」(𠮷田さん)

実際、落雷で裂けた後も生き続けている御神木が、日本中にたくさんあります。昔の人々は、高い木が雷から自分たちを守ってくれていることを知っていて、「神が成る」「神が鳴る」木として崇敬したのかもしれません。

切り株の年輪を数えて100年前にタイムトリップ!

7世紀初頭の古墳を利用した小高い丘に建つ「慈眼堂」
7世紀初頭の古墳を利用した小高い丘に建つ「慈眼堂」

「山門」から入って左手に少し進むと、𠮷田さんが親子向けの「川越探検ツアー」をガイドする際、必ず案内するというポイントがありました。「慈眼堂」のふもとにある、大きなケヤキの切り株です。

ここで子供たちと一緒に、切り株の年輪を観察するのだとか。

年輪は中心部のほうが古く、1年ごとに1本ずつ外側に輪が増えていきます。つまり、年輪の数を数えれば樹齢がわかるのです。よく見ると一周していない線が見つかることがありますが、これは気温などの影響により、余分にできてしまった「偽年輪」。年輪をカウントする際は、内側からいくつかの方向に向かって数えてみるのがポイントです。

「子供たちに数えてもらうと、この木が100年くらいここに生えていたことがわかるんですね。100年前の川越の町はどんなだったのかと想像してもらうと、『武士がいた!』『大正時代だった』とさまざまな答えが返ってきます」(𠮷田さん)

きっと100年前の人たちもこの境内を散策し、春にはお花見をしていたはず。その様子を空想してみたら、自分も昔の人たちと一緒に木々を見上げているような気分になりました。

カシやシイの大木が残る「鎮守の森」を散策

「喜多院」境内の南側には徳川家康を祀る「仙波東照宮」があり、その周囲まで進むといっそう深い森が広がります。

町の音はうっそうと茂る木の葉に遮断され、聞こえるのは風に揺れる木々のざわめきとセミの鳴き声だけ。目を閉じると、一体自分がどこにいるのかわからなくなるような感覚に包まれます。

「シイやカシなどの常緑樹は南に分布している木。日差しから葉を守るため、表面をロウ質(クチクラ層)で覆い紫外線対策をしているんです」
「シイやカシなどの常緑樹は南に分布している木。日差しから葉を守るため、表面をロウ質(クチクラ層)で覆い紫外線対策をしているんです」

「この辺りには、大きなシイやカシの木が多く残っています。人の手が加わる前の時代から存在していた木を切らずに、もともとの森を残しているんです。こういうシイやカシが残っているところが、いわゆる『鎮守の森』。神様がいらっしゃる森として、地域の人たちが守ってきた場所なんですよ」(𠮷田さん)

森が人を守り、人が森を守ってきたことを子供に伝える

境内を歩いている途中、根っこが露出しているケヤキやシイの木を数本見かけました。見えている根っこはごく一部で、さらに地中深くまで伸びていることが想像できます。

「地上にそびえる大木を支えるため、幹の長さと同じくらい深く根を張っているんですよね。山に行けば地面のなかは根っこだらけ。根が土を支えてるんです」(𠮷田さん)

木の下にはたくさんの落ち葉が積もり、時間とともに腐葉土になっていく。つまり、自分で肥料を撒いて自分を成長させているわけで…なんと効率的なシステム!

健全な森には腐葉土が豊富にあり、そこに虫やミミズなどの生物が住みつき、土に穴がたくさんあいているので、多少の雨が降ってもしっかり吸収してくれるのだそう。

土に浸透した雨はやがてきれいな川を作り、大雨の際も地中に張り巡らされた根が「自然のダム」となり土砂崩れを防ぎます。

「仙波東照宮」を囲むように、深い森が広がります
「仙波東照宮」を囲むように、深い森が広がります

「森が地域を守っているということを子供たちが理解すると、先達の人々が森を守ってきた意義がわかり、『自分たちも継承しなくては』と考えるようになるんです」(𠮷田さん)

代々守られてきたものを子供たちに伝え、住んでいる地域で守っていく側になってもらいたい。「自分たちが知っていることの一部分を、伝えていくのが大人の役割」と話す𠮷田さんの笑顔は、とても印象的でした。

「喜多院」の詳細はこちら!

蔵造りの町並みや「川越歴史博物館」へ

その後は、川越のメイン観光地である「川越一番街商店街」へ。あの切り株を見たときのように想像力を働かせてみると、江戸時代~100年前の人々が町を行き交う様子が目に浮かび、ちょっと違った視点で楽しむことができました。

「川越一番街商店街」の詳細はこちら!

「川越歴史資料館」は「喜多院」から徒歩約1分、「川越市立博物館」は徒歩約15分の場所にあります
「川越歴史資料館」は「喜多院」から徒歩約1分、「川越市立博物館」は徒歩約15分の場所にあります

「散策後は『川越歴史資料館』や『川越市立博物館』に足を運び、昔の町並みなどの展示を見てみると、さらにイメージが膨らみますよ」と𠮷田さん。

「ご先祖様が子供の頃に眺めていたのと同じ景色を、今自分が見ていて、そこに立っているんだ! と感じたあとに訪れるのと、何もしないで展示や資料を見るのとでは、得るものがまるで違うと思うんです。歴史の教科書に載っていることが、さらに身近になるはず」(𠮷田さん)

空想と現実を行き来しながらタイムトリップを満喫した川越の旅。ぜひ、親子で楽しんでみてください。

「川越歴史博物館」の詳細はこちら!

「川越市立博物館」の詳細はこちら!

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