小湊鉄道で世界と繋がるアート旅へ<br/>いちはらアート×ミックス体験レポ
更新日2022年04月13日/公開日2021年12月10日

小湊鉄道で世界と繋がるアート旅へ
いちはらアート×ミックス体験レポ

体験する
芸術を楽しむ

房総半島の中央に位置し、千葉県最大の面積を誇る市原市。東京から約1時間の距離にあり、美しい里山と田園風景のなかを小湊鉄道(こみなとてつどう)が走る、のどかなまちです。

2021年11月19日(金)から12月26日(日)まで開催される「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020+」は、そんな市原市全域に世界各国のアートがあふれる芸術祭。ふれたり遊んだりしながら、子供の感性を刺激する体験型の作品も盛りだくさんで、親子の日帰り旅にぴったりです。

そこで「いこーよとりっぷ」編集スタッフが小湊鐵道に乗り、同芸術祭を体験。親子におすすめの展示や楽しみ方をたっぷりレポートします!

※時期により、作品の内容や展示エリアが変更になる場合があります。詳細は公式サイトを確認してください

「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020+」とは?

アイシャ・エルクメン作「Inventory」
アイシャ・エルクメン作「Inventory」

「いちはらアート×ミックス」は、市原市の豊かな自然や文化、人の暮らしといった「まちの資源」を生かしたアートイベントです。2014年を皮切りに、2017年には第2回目を開催。第3回目は2020年の春に開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため2度延期され、2021年11月19日(金)~12月26日(日)の期間に開催されることになりました。

「市原湖畔美術館」
「市原湖畔美術館」

キャッチフレーズは「晴れたら市原、行こう。」。都内から車や電車でアクセスしやすく、思い立ったら気軽にでかけられる楽しい芸術祭です。

親子で一緒に遊べる、体験型アートがまちじゅうに!

アコンチ・スタジオ作「MUSEUM-STAIRS / ROOF OF NEEDLES & PINS」(市原湖畔美術館)
アコンチ・スタジオ作「MUSEUM-STAIRS / ROOF OF NEEDLES & PINS」(市原湖畔美術館)

同芸術祭には、17の国と地域から総勢約70組のアーティストが参加。オブジェや絵画、写真、インスタレーションなど、あらゆる手法で表現された作品が、まち
のいたるところに展示されます。ふれたり、遊んだり、体験できたりできる作品も多く、テーマパークで遊ぶような感覚で、現代アートに親しむことができます。

「小湊鉄道」に乗り、旅行気分でアートめぐり

小湊鉄道(上総牛久駅)
小湊鉄道(上総牛久駅)

広大な市内を縦断する小湊鉄道は、五井駅から上総中野駅までの18駅を結ぶディーゼル列車。1925年に開通して以来、約100年の歴史を誇ります。

「ICHIHARA ART×MIX 2020+」のロゴがデザインされた車体
「ICHIHARA ART×MIX 2020+」のロゴがデザインされた車体

「いちはらアート×ミックス2020+」では、小湊鉄道を軸に9つの展示エリアが点在しています。つまり、電車に乗ってアートめぐりをするのが同芸術祭の醍醐味。車でエリア間を移動することもできますが、やはりおすすめは電車旅! 車で訪れた場合は、駅の駐車場に停めて数駅間を往復してみるだけでも、路線の魅力を感じることができますよ。

上総牛久駅のホーム
上総牛久駅のホーム

大正時代~昭和初期に建てられた木造の駅舎や、赤とクリーム色の車体は、ノスタルジックでほっとする雰囲気。窓の外には絵本の世界のような田園風景が広がり、乗っているだけで心が癒やされます。

なかでも親子におすすめなのが「房総里山トロッコ」(乗車券とは別に整理券600円が必要)。特に、窓のない展望車両は開放感抜群です。天気がいい日に風を感じながら景色を眺めれば、旅気分がさらに盛り上がること間違いなし♪ 運行本数が少ないので、公式サイトでスケジュールを確認して整理券を予約しておくと安心です。

レオニート・チシコフ作「7つの月を探す旅『第二の駅 村上氏の最後の飛行 あるいは月行きの列車を待ちながら』」(上総村上駅)
レオニート・チシコフ作「7つの月を探す旅『第二の駅 村上氏の最後の飛行 あるいは月行きの列車を待ちながら』」(上総村上駅)
車窓から見た上総三俣駅。レオニート・チシコフ作「7つの月を探す旅『第四の駅 三又宇宙基地』」
車窓から見た上総三俣駅。レオニート・チシコフ作「7つの月を探す旅『第四の駅 三又宇宙基地』」

駅と駅をつなぐ線路沿いや、駅舎そのものに置かれた作品群「駅舎プロジェクト」も展開されています。車窓から鑑賞できるアートも多いので、お見逃しなく!

さらに会期中は、市内の会場を巡る「芸術祭無料周遊バス」も運行しています。駅から離れた展示エリアまで周遊バスに乗り、またそこから違う駅へ向かうこともできます。電車とバスを上手に組み合わせて、アート旅を楽しみましょう。

土日限定のランチ付きオフィシャルツアーもおすすめです。

「いちはらアート×ミックス2020+」の巡り方とオフィシャルツアーの申込みはこちら!

「小湊鉄道イルミネーション」も同時開催中!

期間中、小湊鉄道ではイルミネーションイベントを実施しています。ライトアップされたレトロな駅舎は、まさにアート。イルミネーショントロッコ列車も運行しているので、芸術祭とあわせて楽しんでみては。

■期間:2021年11月19日(金)~12月26日(日)夕方以降
■イルミネーショントロッコ列車ダイヤ運行時間:五井駅(15:19発)→上総牛久駅(16:13着)→上総牛久駅(16:25発)→五井駅(17:08着)

小湊鉄道「房総里山トロッコ」の詳細と申し込みはこちら!

まちの日常とアートのコラボにイマジネーションがふくらむ

養老川 Photo by NAKAMURA Osamu
養老川 Photo by NAKAMURA Osamu

市原市は養老川の恵みにより、古くから稲作が盛んなまち。人々の暮らしと田んぼ、その周辺を囲む里山は今も密接につながり、養老川の一帯には5つの滝を持つ神秘的な養老渓谷が広がります。

マリア・ネポムセノ「知るは海」(旧平三小学校)
マリア・ネポムセノ「知るは海」(旧平三小学校)

同芸術祭には、その豊かな自然を生かした展示のほか、廃校になった小学校や保育園、小さな集落の古民家などを利用した作品もあり、アートを通じて地域のストーリーを感じられるの大きな特徴です。

ジョアン・カポーテ作「Nostalgias」(上総川間駅)
ジョアン・カポーテ作「Nostalgias」(上総川間駅)

緑あふれる里山、昔ながらの商店街、ローカル線の小さな駅舎といった「まちの日常」に、現代アートが溶け込んだ光景は、非日常的な楽しさがいっぱい。子供も大人も想像力がかきたてられ、ワクワクすること間違いなしです!

「ガイドマップ」と「パスポート」を入手して出発進行!

五井駅前
五井駅前

展示は市内の広い範囲に点在し、作品数も膨大なので、全てを見るのに3日ほどかかります。家族連れなら、子供も一緒に楽しめる展示に的を絞り、日帰りもしくは1泊2日で回るのがよさそう。ガイドを手に効率よくめぐるのがおすすめ。公式サイトなどで作品やルートを事前にチェックしておけば、より安心です。

五井駅には2021年にカフェ併設の「こみなと待合室」がオープン。授乳やオムツ替えができるベビールームもあります
五井駅には2021年にカフェ併設の「こみなと待合室」がオープン。授乳やオムツ替えができるベビールームもあります

鑑賞の順番にルールはありませんが、JR内房線が乗り入れている五井駅から出発するのがおすすめです。まずはインフォメーションに立ち寄り「芸術祭ガイドマップ」を入手しましょう。周遊バスの時刻表もついていて便利です。

また、インフォメーションや各展示エリアの受付では、全作品を1回ずつ鑑賞できる「作品鑑賞パスポート」を販売(会期中有効、大人当日3,000円/前売2,500円、高校・大学生1,500円、小中学生500円、未就学児無料)。数多くの作品を見て回れないようであれば、作品ごとに料金が設定された300~1,000円の「個別鑑賞券」を購入して鑑賞することもできます。

※インフォメーションは五井駅と上総牛久駅に設置
※パスポート販売、ガイドマップの配布は各展示エリアでも実施しています

親子におすすめの展示エリア6選!子供が夢中になる作品を紹介

カルロス・ガライコア作「ウェイクアップ/シティ/スリープ」(旧白鳥エリア)
カルロス・ガライコア作「ウェイクアップ/シティ/スリープ」(旧白鳥エリア)

ファミリーにおすすめのエリアを6カ所ピックアップ。子供が満喫できる作品を厳選してご紹介します。

紹介した作品展示場所へのアクセス

  1. 【五井エリア】乗り物好きな親子は車両基地もチェック!:五井駅
  2. 【牛久エリア】レトロなまち並みに現代アートが融合:上総牛久駅前
  3. 【平三エリア】小学校が、希望を表現するアートに変身!:上総鶴舞駅から周遊バス約11分
  4. 【月崎エリア】深い森と人をつなぐ緑の里:「森ラジオステーション×森遊会」月崎駅すぐ、「Inventory」月崎駅から徒歩約15分、周遊バスで約5分
  5. 【里見エリア】ユニークな展示&地元食材のランチも!:飯給駅から徒歩約20分、月崎駅からバス約7分
  6. 【高滝エリア】駅に面したワンルームホテル&湖畔の美術館は必見!:「上総久保ホテル」上総久保駅/「市原湖畔ホテル」高滝駅から徒歩約20分もしくは里見駅からバスで約5分

乗り物好きな親子は車両基地もチェック!「五井エリア」

アレクサンドル・ポノマリョフ作「Questions of Evolution ー進化の問題ー」(五井機関区)
アレクサンドル・ポノマリョフ作「Questions of Evolution ー進化の問題ー」(五井機関区)

五井駅でガイドマップを入手したら、ぜひ時間をとって小湊鉄道の車両基地「五井機関区」へ。通常は予約をしないと見学できませんが、会期中は9時から16時まで一般開放しています。

キハ5800形式気動車
キハ5800形式気動車

かつて活躍していた蒸気機関車を使った作品「Questions of Evolution ー進化の問題ー」のほか、普段は非公開のキハ5800形式気動車も見られるので、乗り物好きな子供が大喜び。

アデル・アブデスメッド作「Play it Again」Photo by NAKAMURA Osamu
アデル・アブデスメッド作「Play it Again」Photo by NAKAMURA Osamu

さらに駅のホームでも、いくつかの作品が見られます。ロープで吊るされたピアノが、列車の出発にあわせてジャズの演奏を始めるという驚きの仕かけも!

それでは小湊鉄道に乗って、アートの冒険へでかけましょう♪

【アクセス情報】JR内房線、小湊鐵道・五井駅

レトロなまち並みに現代アートが融合「牛久エリア」

「移動写真館」の会場
「移動写真館」の会場

五井駅から約30分。車窓から駅舎プロジェクトの作品を眺めつつ、トロッコに揺られて上総牛久駅へと向かいます。牛久はかつて宿場町として発展してきたまち。昭和の面影を残した牛久商店街に、遊び心あふれる写真館や名画座など、個性あふれる作品が出現します。

■「移動写真館」

マー・リャン(馬良)作「移動写真館」
マー・リャン(馬良)作「移動写真館」

昭和の初期、子供たちにとってメジャーな娯楽だった「紙芝居屋」からインスピレーションを得た写真館。紙芝居のフレームをイメージしたセットに入り、自由に記念撮影が楽しめます。

セットの中には小道具がいっぱい! ストーリーを空想しながら仮装して、登場人物になりきって撮影してみましょう♪

壁一面に並ぶ写真は、市原市に住む人たちがモデル。スタイリングや演出も見事で、1枚ずつ見入ってしまいます。

【アクセス情報】小湊鐵道・牛久駅から徒歩約3分

■「牛久名画座」

「牛久名画座」と、アーティストの豊福亮さん
「牛久名画座」と、アーティストの豊福亮さん

豊福亮さんによる「牛久名画座」は、壁や天井が名画の模写で埋め尽くされたインスタレーション。

さりげなく画材が置かれているコーナーも。子供の制作意欲が刺激されそうですね。

【アクセス情報】小湊鐵道・牛久駅から徒歩約4分

■「KINETIC PLAY」

「KINETIC PLAY」は、ガラス工芸作家・柳建太郎さんの工房を模したアート空間です。たくさんの古時計と工具が並ぶスペースに、工作好きな子供はきっと興味津々!

柳 建太郎作「KINETIC PLAY」
柳 建太郎作「KINETIC PLAY」

ガラス製でありながらプロペラやチェーンなどを動かせる繊細なアートも必見です。12月の土日には、ガラスペンやマドラーを制作するワークショップも開催されますよ(小学校高学年以上が対象)。

ガラスワークショップの詳細はこちら!

【アクセス情報】小湊鐵道・牛久駅から徒歩約4分

小学校が、希望を表現するアートに変身!「平三エリア」

上総鶴舞駅
上総鶴舞駅

上総鶴舞駅から周遊バスで約11分。小湊鉄道から離れた場所にある、閉校した「旧平三小学校」の校舎を利用した展示エリアです。山に囲まれた自然豊かな環境の中、「子どもたちの希望の学校」をテーマに11人のアーティストたちが12作品を展示しています。

■「ドリームキャッチャー」

キム・テボン(金泰範)作「ドリームキャッチャー」
キム・テボン(金泰範)作「ドリームキャッチャー」

未来を目指し、夢を捕まえに行くインスタレーション作品。宇宙船のような構造物の中に入ると、フラッシュが高速で点滅します。夢を追いかけるヒーローになった気分で冒険を楽しみましょう!

■「ビルズクラウド」

栗真由美作「ビルズクラウド」
栗真由美作「ビルズクラウド」

気持ちよく晴れた日に市原市を訪れたアーティスト・栗まゆみさんは、まちの優しい明りを目にして、「このエリア一帯の温かさを象徴している」と感じたそう。作品では、ミニチュアハウス型のランプで市原市のまち明りを再現。柔らかく幻想的な光に心癒されます。

【アクセス情報】小湊鐵道・上総鶴舞駅から周遊バス約11分

深い森と人をつなぐ緑の里「月崎エリア」

木村崇人「森ラジオ ステーション×森遊会」Photo by NAKAMURA Osamu
木村崇人「森ラジオ ステーション×森遊会」Photo by NAKAMURA Osamu

養老川上流に位置し、広大な国有林を持つ地域です。月崎駅には森と人とをつなぐ常設展示があり、ジブリ作品のような世界観が広がります。月崎駅から周遊バスで5分ほどの場所には「月崎の里」と名付けられた小展示エリアも。里山の小さな集落での暮らしに思いをはせながら、アートを楽しんでみましょう。

■「森ラジオステーション×森遊会」

月崎駅のすぐ隣にある「森ラジオ ステーション」は、鉄道保線員の詰所だった小屋を「人を森に導く駅」と見立た作品。地域に長く存在し、人々と関わることをコンセプトにした常設のアートです。

有志団体「森遊会」の田村さんと、同作品を手がけるアーティストの木村崇人(たかひと)さん
有志団体「森遊会」の田村さんと、同作品を手がけるアーティストの木村崇人(たかひと)さん

「いちはらアート×ミックス2014」開催時に制作され、2017年には現在の名前に変更。本作品の魅力向上のために活動する「森遊会」の会員とともに作品を維持管理し、少しずつ進化させています。

フォトジェニックなスポットとしても人気で、映画のロケ地やウェディングの撮影にもよく使われるそうです。

保線員が使用していた道具類も見どころの1つ
保線員が使用していた道具類も見どころの1つ

作品の大きな特徴は、森の中に設置したマイクの音を受信するラジオが置かれていること。スピーカーの前で耳を澄ますと、虫の音や鳥のさえずり、イノシシやキョンの声、風に揺れる木々の音などが流れてきて、森の中の景色が目に浮かんできます。

苔でおおわれた小屋の外壁に植えられているのは、60種類以上の山野草。そのうち約30品種は食べられるそうです。

「地面にかわいい山野草が生えていても、あまり目にとまらないですよね。でも壁に植えると、皆その存在に気づくようになるんです」(木村崇人さん)。

なるほど、視点を変えると物事のとらえ方が変わるわけですね!

周りにはベンチやテーブルなどが置かれているので、ぜひ山々を眺めながら一服してみましょう。作品を通じて気づいたこと、感じたことなど、親子の会話がはずむはず。

不定期ですが、「森遊会」のメンバーが作品案内やおもてなしをしてくださる機会もあります。取材時にはクロモジ(クスノキ科の香木)のおいしいお茶をいただきながらおしゃべりを楽しみ、森をより身近に感じることができました。

【アクセス情報】小湊鐵道・月崎駅すぐ

■「Inventory」

アイシャ・エルクメン作「Inventory」
アイシャ・エルクメン作「Inventory」

月崎駅から周遊バスで約5分の小エリア「月崎の里」には、かつて有力者が住んでいた大きな古民家をまるごとアートにした作品が。どっしりとした門の中に現れたのは、白いスチールかごがずらりと並ぶ庭。

近寄ってかごを覗いてみると、中には仏像や人形、 昭和の終わりごろを感じさせるデザインのプラスチック製の食器など、一見とりとめのない品々が収納されています。宝探しをするようにワクワクしながら1つずつじっくり鑑賞。これらの物品は全て、ここで暮らしていた家主さんの家財なのだそうです。

この不思議な光景を見ただけで、そこに「何か」が存在する気配を感じたのは、以前住んでいた人の大切な品が並んでいたからかもしれません。

「おじゃまします」とつぶやきつつ、空っぽになった家の中へ。なんだか祖母の家に遊びに来たような懐かしい感覚。外に展示されていた物品を思い浮かべると、ここで暮らしていた人たちの生活についてどんどん空想がふくらんでいきます。

部屋数が多く、まるで迷路のような家なので、子供はきっと大はしゃぎ! 「ここで食事をしていたのかな?」「どんな人が住んでいたんだろう」と親子の会話が弾みそうなアートでした。

【アクセス情報】小湊鐵道・月崎駅から徒歩約15分、周遊バスで約5分

ユニークな展示&地元食材のランチも!「里見エリア」

飯給駅から徒歩約20分、月崎駅から周遊バスで10分ほどの「旧里見小学校」で、旧校舎や体育館、グラウンドを生かした展示が楽しめます。里山食堂で食べられるオムライスや里山カレーは、ランチタイムにぴったりです。

■「モグラハウス」

開発好明作「モグラハウス」
開発好明作「モグラハウス」

2017年に出品された「モグラハウス」が、今期も広々としたグラウンドの一角に出現。モグラこと、作者の開発好明(かいはつよしあき)さんによると「土を使ってお手紙を書く場所を作るモグよ!」とのこと。取材時は未完成のため見られませんでしたが、期間中はドアを開けて中をのぞいてOKとのこと。

取材当日、校庭にはたくさんのモグラの穴が…!? 訪れた際は、グラウンドもよく観察してみてくださいね。日曜には、開発さんがモグラとして登場する予定です。

■「おかしのはなし」

「おかしのはなし」と、アーティストのEAT&ART TAROさん
「おかしのはなし」と、アーティストのEAT&ART TAROさん

里山食堂の上の階では、「おかしのはなし」という、何やら気になる名前のイベントが開催されていました。学校の廊下から入っていくと、現れたのは…和菓子屋の旦那さん?

実はこの人こそ、本作品を手がけたEAT&ART TAROさんご本人。食をテーマに活動している現代芸術家です。

「お土産にされることが多いお菓子には、その土地の伝承や逸話をもとに創作されたものがたくさんあります。そんな地域のストーリーを記した“しおり”が同梱されているお菓子を、房総エリア全域から集めてみました」

お菓子を五感で味わいながら、それにまつわる「おかしのはなし」を聞くひととき。地域の歴史、文化、伝統を知ることができ、楽しいアート体験となりました。

※個別鑑賞料300円、もしくはパスポート提示以外に、体験料500円が必要です

■「Artists’ Breath Playback」

世界中のアーティスト194組がインスタグラムに2分間ずつ投稿したメッセージ動画を、アート作品として展示。体育館に一歩足を踏み入れると、幻想的な空間が広がります。

コロナ禍で芸術祭やアートイベントが次々に延期、中止となるなか、アーティストたちは何を考え、どう生活しているのかを垣間見ながら、同じ時代に生きている仲間だということを実感できます。

給食を思い出す一品♡ 人気の「里山カレー」に舌鼓

「里山カレー」600円
「里山カレー」600円

校舎の1階中央には、地域の人たちが働く「里山食堂」があります。地元の野菜を使った「里山カレー」が名物と聞き、さっそく注文。新鮮な野菜を大きな鍋でじっくり煮込んだカレーは旨味たっぷりで、懐かしい給食のカレーを思い出します。

付け合わせや副菜にも地元の農産物が使われています。梅のシロップ漬けや京芋の煮付けなど、どれも優しい“お母さんの味”でした。

【アクセス情報】小湊鐵道・飯給駅から徒歩約20分、月崎駅からバス約7分

駅に面したワンルームホテル&湖畔の美術館は必見!「高滝エリア」

上総久保駅
上総久保駅

田んぼの中を単線が通り抜ける上総久保駅と、観光地が集まる高滝駅周辺を網羅した広域エリア。上総久保駅には、世界に類を見ないワンルームホテルがアート作品として建てられ、話題を集めています。また、高滝駅から徒歩約20分、里見駅から周遊バスで約5分の場所にはアートの町、市原市の中核を担う「市原湖畔美術館」があります。

■「上総久保ホテル」

西野達 作「上総久保ホテル」
西野達 作「上総久保ホテル」

個人的にもっとも心弾んだ作品がこちら。上総久保駅の待合室をテラスに見立て、駅舎にぴったりとくっつくように建てられたホテルです。公共の場所である駅舎とプライベート空間であるホテルの客室がつながった非日常的な光景に、ワクワクが止まりません。

実際に宿泊できるのかどうかが気になって調べてみたところ、毎週土曜に“夜間鑑賞”という形で実施していることが判明。しかし会期中の予約はすでに埋まり、いったん募集を締め切っていました。

ノスタルジックな内装は昔の映画に出てきそうな雰囲気で、どこを切り取ってもフォトジェニック。ぜひ親子で、記念撮影してほしい素敵な空間です。

ホテルを裏から見たところ。黒い建物がホテルで左が駅の待合室です。駅の横には大きなイチョウの木があり、黄葉が見事でした。

駅周辺を散策したり、少し立ち止まって景色を眺めるのもおすすめ。日本人の原風景を眺めながら、思い切り深呼吸したくなりますよ。

【アクセス情報】小湊鐵道・上総久保駅

■「市原湖畔美術館」

中庭には芝生が広がり、房総の食材を使用したピザがおいしい「PIZZERIA BOSSO」も併設されています
中庭には芝生が広がり、房総の食材を使用したピザがおいしい「PIZZERIA BOSSO」も併設されています

千葉県最大の貯水面積を誇る、高滝湖の湖畔に建てられた美術館。銅版画・深沢幸雄氏の作品を中心とした常設展に加え、バリエーション豊かな企画展を開催しています。

KOSUGE1-16作「Heigh-Ho」
KOSUGE1-16作「Heigh-Ho」

入館してすぐの場所にあるのは、「Heigh-Ho」という名の立体像です。不思議な形だなぁと眺めていたら、スタッフの方から「人間の肺胞をイメージしたアートなんですよ」と聞いて納得。

こっそり怠け中の「Toy Soldier」
こっそり怠け中の「Toy Soldier」

常設展の入口には、ちょっぴり怠け者の兵隊さんがいます。目の前から人がいなくなると膝を曲げてひと休みしますが、近づくとすぐにシャキッと直立するため、怠けている現場を目撃するのは意外と難しいかもしれません。

アコンチ・スタジオ作「MUSEUM-STAIRS / ROOF OF NEEDLES & PINS」
アコンチ・スタジオ作「MUSEUM-STAIRS / ROOF OF NEEDLES & PINS」

「Heigh-Ho」の脇にある階段と、上った先に広がる屋上には、合計約700本のチューブが林立しています。うっそうと生えたアシの葉をかき分けるように進んだり、優しく揺すったりしても大丈夫。光を浴びると金色にキラキラと光り、いっそう幻想的な雰囲気に変わります。

また、屋上から見た高滝湖の景色も絵画のように美しく、思わず何度もカメラのシャッターを切ってしまいました。

高さ約28mの展望塔。迫力満点の造形美に圧倒されました
高さ約28mの展望塔。迫力満点の造形美に圧倒されました

美術館から建物を挟んだ反対側にそびえ立つのは、明治から大正時代にかけて農業用水の供給に使われた「藤原式揚水機」の原寸模型。最上階の展望台まで上ると、湖や遠くの山々を望むパノラマビューが広がります。

高低差が激しいこの地域では、高地にある田んぼまで川から水をくみ上げていたそうです。この揚水機がなければ稲が作れない土地もあったはず…と、昔の人たちの苦労や英知に思いをめぐらせながら、夕暮れの景色を楽しみました。

【アクセス情報】高滝駅から徒歩約20分もしくは里見駅から周遊バスで約5分

ほかにも見どころがいっぱいの芸術祭。市内には「市原ぞうの国・サユリワールド」「千葉こどもの国キッズダム」といったレジャー施設や、養老渓谷の温泉宿など、ファミリー向けのスポットがそろっています。ぜひ芸術祭とあわせて足を運んでみてください♪

■いちはらアート×ミックス 2020+概要
開催日:2021年11月19日(金)~12月26日(日)
開催時間:10:00~16:00
※作品によって開催日時が異なります
定休日:月火曜
開催エリア:千葉県市原市、小湊鐵道を軸とした周辺エリア(五井、牛久、高滝、平三、里見、月崎・田淵、月出、白鳥、養老渓谷)
鑑賞パスポート料金:大人3,000円(前売り2,500円)、高校生~大学生1,500円、小中学生500円
※県内の小中学生にパスポートの無料引換券を配布
※個別鑑賞券は作品により異なります

記事を書いた人

雨宮あかり

「いこーよとりっぷ」エディター/食べること・飲むこと・音楽が大好きなママ編集者。世界中の音楽フェスを体験すること&ベルギービールの醸造所めぐりが夢です♪ 特技はアロマセラピートリートメントです。

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