五感で心満たす山岳リゾート
親子で楽しむ上高地ハイキング
長野県松本市の西部にある、美しい手つかずの自然が残る上高地。国内はもとより、海外からも多くの観光客が訪れる山岳リゾートです。
アルプスの山々を望む風景、ハイキングコースの脇を流れる梓川(あずさがわ)の水の美しさ、自然に息づく動植物たちが、訪れる人々を魅了します。
そんな上高地のなかでも、子供と一緒に本物の大自然を体験できるおすすめハイキングコースを、いこーよとりっぷ編集部が厳選して紹介。ファミリーで上高地を訪れる際のポイントもあわせてお届けします。これを読めば、より一層上高地旅行が楽しめますよ。
※記事中の価格などの情報には、一部取材時の情報が含まれます。最新情報および詳細は、公式サイトをご確認するか、店舗へご確認ください
河童橋から歩く上高地、2大コースを徹底解説
通年マイカー規制をしている上高地。上高地へは、バスかタクシーで訪れることになります。
訪れる人のほとんどは上高地の玄関口「上高地バスターミナル」に降り立ちます。ここから5分歩けば、上高地のシンボルでもある「河童橋」へ到着。河童橋周辺にはホテルやレストラン、お土産店が集まっています。
また、写真撮影の人気スポットとなっているので、旅の思い出にぜひ家族写真を撮ってみては?
橋の上からは穂高連峰や焼岳などの山々が望め、梓川の澄んだ水の流れとのコントラストが息を飲むような美しさです。ここを起点に上高地の旅をスタートしましょう!
上高地のウォーキングコースは勾配がほとんどなく、歩きやすい道が整備されています。幼児でもしっかり歩けるようになったら十分ハイキングを楽しめます。所々にベンチも設置されていて、水分補給や休憩をしながら歩けるので安心です。
しっかり歩ける幼児以上におすすめの「大正池コース」
幼児連れのファミリーにおすすめなのが、河童橋から大正池を目指すコースです。
大正池までの道は、まず、梓川の右岸、左岸のどちらかを歩いて、途中の田代橋まで進みます。田代橋を過ぎると、梓川の流れをすぐ近くに感じながら歩ける「梓川コース」と、森林浴をしながら歩ける「林間コース」に分かれます。
どのコースを選んでも全長約4km。片道90分ほどで歩けますが、子供連れなら片道2時間くらいを想定しておくと良いですね。
無理のない行程でハイキングが楽しめるのも魅力
往復が難しそうな場合は、大正池にバス停があるので、バスで河童橋に戻る、または帰路に着くこともできます。無理のない工程で楽しめるのもこのコースの魅力です。
逆に、上高地行きのバスやタクシーを大正池で途中下車し、そこから河童橋まで歩くのも手。朝のハイキングを満喫して、お昼頃に到着するようにして、河童橋周辺でランチも楽しむのもおすすめです。
もちろん小学生以上や体力に自信のある子供なら、行き帰り別々のコースを歩いてみましょう。往復でも午前中の早い時間に出発すれば、お昼には河童橋まで戻ってくることが可能です。
片道のみの場合は、田代橋から先は林間コースがおすすめ。晴れた日にはキラキラした木漏れ日が差し込む森の中を、鳥のさえずりを聞きながら心地よく歩けます。今回はこちらの林間コースをご紹介します。
途中に絶対立ち寄りたい絶景ポイント「田代池」
河童橋から、梓川の右岸または左岸を30分ほど歩くと、大正池までちょうど中間点くらい。ここに位置するのが「田代橋」です。
この橋の上からも山々の絶景が楽しめ、すぐ下の梓川の清流を眺めることができます。橋のたもとには屋根付きの休憩ポイントもあるので、ここでもちょっと一休みが可能です。
田代橋から少し歩くと、梓川コースと林間コースに分かれるポイントが。ここを林間コース(木製の歩道が目印)に入っていきましょう。木製の歩道はちょっとしたアトラクションのような感覚で歩けるので、子供たちもワクワク。探検隊になった気分で歩みを進めましょう。
林間コースを20分ほど歩くと、歩道が広くなった場所へ。周辺には湿原が広がり、さらにその先を目指すと、原生林の中に広がるおすすめの絶景ポイント「田代池」が! 田代池は、土砂が堆積してできた池で、水深が浅く、水田のような静かで穏やかな光景が広がります。山々の緑と池の澄んだ水、また池底の黄土色が幻想的な雰囲気を作り出しています。
田代池を鑑賞したあとは、大正池を目指しましょう! 子供が歩くのに疲れてきたら、目線を変えてみては? 歩道の脇には、標高が高い上高地だからこそ出会える花々や、シラカバの木も。植物図鑑で調べたり、写真を撮ったりするのも楽しいですよ。
林道が一気に開けてきたら、もうすぐ到着! 大正池の手前は湿地帯の上を渡した桟橋を歩いていきます。
大正池は「水鏡」と呼ばれるほど、周囲の風景を映し出す美しい池。大正時代に焼岳が噴火した際に出現した池で、歴史は浅いですが、できた当時から面積が半分近くまで小さくなっているとか。大自然が日々変化していることを感じさせてくれる風景です。
小学生以上なら歩いてみたい「明神池コース」
体力がついてきた小学生以上におすすめなのが、河童橋から「明神池」を目指すコース。こちらは、大正池コースのようにバスなどが利用できないので、歩いての往復が必須になります。
河童橋からの道は、梓川の左岸を歩くコースと、右岸を歩くコースの2つ。子連れファミリーなら、行きは自然景観の変化を楽しめる右岸コース、帰りは少し距離が短い左岸コースを選ぶと、歩き疲れた子供への負担が少なくおすすめです。
明神池までの道は、アップダウンも少なく歩きやすくなっています。また、途中に木製の歩道があったり、階段を登ったりと変化があるので、子供たちも飽きずに歩けますよ。
自然の息吹にふれられる「岳沢湿原」
右岸のコースは、所々水の流れや沢があり、泳いでいる魚を観察できることも。なかでも、右岸コースの途中にある「岳沢湿原」は、魚やカモなどが生息している場所。
さらにせせらぎの音や小鳥のさえずり、優しくそよぐ風、キラキラと光る木漏れ日の眩しさが迎えてくれる、大自然を五感で感じさせてくれるスポットです。
右岸コースを歩いていくと、「明神橋」の手前を左へ入る道が。そこを曲がると明神池に到着します。池の手前には岩魚の塩焼きなどが食べられる食事処も。ここで一息つくのもいいですね。
さらに進んでいくと、明神池の入り口が見えてきます。明神池は一之池と二之池の2つの池があり、梓川の湧き水が溜まってできた池といわれています(遊歩道の脇には三ノ池もあります)。また、池のほとりに鎮座する穂高神社奥宮の「神降池」として信仰されており、静まり返った静寂が神々しさを一層引き立てます。
この池は早朝にもやが出やすいことでも知られ、運がよければこの世のものとは思えない神秘的な光景が見られることも。
帰りは、明神橋を渡って左岸コースを歩き、河童橋まで戻ります。明神橋も吊橋で、ここからの景色も圧巻! 河童橋ほど人がいないので、ゆっくりと写真撮影もできますよ。
左岸コースは小石の多い砂利道になっていますが、こちらも勾配はほとんどなく、歩きやすい道が続きます。景色の変化は少ないですが、マイナスイオンたっぷりの自然豊かな歩道を歩けば、心も身体も満たされます。右岸コースより500mほど距離が短め。子供が疲れていたら、「がんばれ」「もうちょっと」とはげましながらゴールを目指しましょう。
往復での所要時間は、通常なら2時間ほど。子供と一緒に歩く場合は3時間程度見ておくと安心です。
上高地で出会える生き物たち
自然豊かな上高地でのハイキングは、普段は見られない野生の動物たちに出会えるのも魅力のひとつ。もちろん必ず出会えるわけではありませんが、期待しながら歩くだけでもワクワクできますし、本当に見られたときは親子で思わずテンション上がるはず。
ただ、あくまで野生動物なので、近づいたり、おどろかせたり、エサを与えたりしないようにしましょう。
一番良く見かけるのはニホンザル。河川敷を歩いている姿が見られるほか、普通に歩道沿いを歩いていたり、木登りするところが見られたりすることも。人間を恐れず間近に来ることもあります。
キツネやタヌキ、リスなども生息しています。小さな動物は動きが速く、茂みに体が隠れやすいので、見つけられたらラッキーですね。
水の澄んだ川にはイワナなどの魚が生息。流れのある浅瀬に集団で生息していることも多く、子供でも簡単に見つけられますよ。大正池や明神池にも生息しているので、じっくりと観察してみるのもいいですね。
鳥やチョウなど、空に舞う生き物たちもたくさん生息しています。空を見上げて深呼吸すれば、美しく羽ばたく姿を見られるかもしれません。
上高地グルメを堪能!絶景とともに頂く贅沢な時間
たくさんの飲食店やお土産店が軒を連ねる河童橋周辺。気軽に食事が取れるカジュアルなお店もあり、子連れも安心して食事や休憩ができます。そのなかでも、上高地の絶景が楽しめる、親子におすすめのスポットをご紹介します。
オープンエアのテラス席あり!気軽に立ち寄れるテイクアウトカフェ
河童橋のたもとにある「上高地ホテル白樺荘」に併設する「カフェ小梨」。店の前には開放感たっぷりのテラス席も設置。上高地のおいしい空気と一緒にグルメを堪能すれば、リゾート気分がより高まります。
カツ丼や山賊バーガーなど、ボリュームたっぷりのメニューもあり、ハイキング後の空腹もしっかり満たせます。
ハイキングのあとは温泉も!貸切風呂も備えた注目ホテル
今回紹介したようなハイキングを楽しむなら、河童橋周辺に宿泊施設が複数あるので、泊まる場所には困りません。ただ、少し足を伸ばせば温泉が楽しめるホテルも!
上高地で天然温泉が楽しめる宿泊施設は2件あり、そのうちの1件が「上高地ルミエスタホテル」。地下150mから湧き出る源泉かけ流しの天然温泉で、大浴場には露天風呂もあり、上高地の大自然をたっぷり感じながら心ゆくまで温泉を堪能できます。
また、貸し切り家族風呂もあるので、小さな子供連れでも周りを気にすることなく温泉を楽しめます。貸し切り風呂で贅沢なひとときを楽しんでみてはいかがでしょうか。
客室はすべて梓川の清流をのぞめ、雄大な景色を堪能できます。全室禁煙なのもファミリーにはうれしいですね。家族連れで宿泊する場合は和室がおすすめ。和室はすべて2階に位置しているので、近くを流れる梓川がよく見え、部屋の中からでも上高地の自然を間近に感じられます。
また、ホテルステイの時間に味わってもらいたいのが1階のラウンジで販売されているかっぱをモチーフにしたケーキです。ハイキングで疲れた身体に嬉しいのがスイーツ! ホテルのパティシエが心を込めて手作りをしています。このかわいいビジュアルに子供も大興奮! 思い出に残るおやつタイムになりそうですね。
ディナーは本格フレンチのフルコース。子供用のディナーコースも小学生用と未就学児用が用意されていて、家族一緒に特別な時間を過ごせますよ。
宿泊者だけが体験できる満天の星空
都会の喧騒から離れた上高地では、晴れた日には満天の星空を望むことができます。宿泊したら、夜の散歩を楽しむのがおすすめ。ぜひ星座早見盤を用意して、親子でいろいろな星を探してみてください。忘れられない思い出になりますよ。
子供と一緒の上高地、服装と持ち物
上高地の観光シーズンは、毎年開山祭が行われる4月27日から閉山式の11月15日まで。標高の高い上高地では、シーズン通して防寒対策が必要です。
時期によって、以下のような服装をおすすめします。
4月・5月
まだ冬の防寒着が必要です。雪まじりの雨が降ることもあるので、寒さ対策を万全にしておでかけしましょう。
5月下旬頃~6月
平均最高気温が20度くらいまで上がり、日中は過ごしやすい気温となってきます。長袖長ズボンを基本に、脱ぎ着できる服装を心がけましょう。
7月・8月
夏休みシーズンとなっても上高地は最高気温が25度に達しない日が多く、避暑地という言葉がピッタリ。とはいえ、ハイキング中は汗ばむこともあるので、速乾性のインナーを合わせるのがおすすめ。
9月以降は、また5月・6月と同じような気候になります。10月以降に訪れる際は防寒着をお忘れなく。
子供と一緒の場合、荷物も多くなりがち。防寒着としておすすめなのは、ファストファッションブランドなどで人気の薄手のダウン。使わないときは巾着袋にコンパクトにしまえ、寒くなったらすぐ取り出せるので大変便利です。
真夏でもダウンが重宝することも多々あります。また、天候が変わりやすいので、替えの靴下やカッパは必需品です。
上高地へのアクセス
上高地の中は、マイカーは入れません。ですが、バスなどの公共交通機関が充実しているので容易にアクセスできます。
マイカーで行く
上高地は、環境保護のため年間を通じてマイカー規制があります。松本市街方面からは「沢渡(さわんど)駐車場」に停めて、そこからバスかタクシーになります。
バスの料金は、大人が1人往復2,800円、子供が1人往復1,400円になります。タクシーの場合は普通車で上高地バスターミナルまで定額で片道5,200円。
どちらが安いかは人数によって変わりますが、バスの待ち時間や行動の自由度などを考えると、ファミリーの場合はタクシーのほうが気兼ねなく移動できておすすめです。
公共交通機関で行く
松本駅からアルピコ交通上高地線に乗り換えて「新島々駅」へ。そこから上高地方面へのバスが出ています。新島々駅への帰りのバスは予約制となっていますので、必ず予約をしてから上高地を楽しんでください。
予約方法は、WEBにて簡単にできるほか、帰りの乗車券をすでにお持ちの方は上高地バスターミナルの乗車券窓口にて予約が可能です。
ほかにも、東京・名古屋・大阪(京都経由)方面から直行バスが運行しています。東京から5時間ほどかかるので、子供がバスでの長距離移動に耐えられるようなら、運転で疲れることがなく乗り換え不要の直行バスも便利です。
まとめ
本物の自然を我が子に見せたいという親御さんにピッタリの上高地。アルプスの山々と透き通った梓川の流れが織りなす光景は、きっと子供の心に強い印象を残してくれるでしょう。
マイカー規制があるため、なかなかアクセスしづらいと思われがちですが、事前に情報を入手していれば、スムーズにおでかけが可能です。連れていった子供が大人になったとき、またその子供を連れていきたいと思える絶景が待っています。次の家族旅行は上高地へでかけてみませんか?
記事を書いた人
大縄典子
いこーよとりっぷ編集部/転勤族の夫を持ち様々な土地に縁がある、大学生の息子、高校生の娘がいるママ。結婚後、子育てに専念するため10年以上の専業主婦経験を経て、ひょんなことから社会復帰を果たす。今は様々な自治体とのやり取りをしながら、まちの魅力を伝える仕事に情熱を燃やしています。人と話すことが好き。
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