目指すは「日本一楽しい!」<br/>奥深すぎる醤油工場見学
公開日2021年07月30日/更新日2022年05月16日

目指すは「日本一楽しい!」
奥深すぎる醤油工場見学

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ものづくり
埼玉県比企郡川島町

お醤油は日本人の食卓に欠かせない発酵調味料の1つ。でも「どうやって作るの?」と子供に聞かれて、すらすらと答えられるママパパは少ないのではないしょうか。私自身も、店先に並ぶ「◯年醸造」の醤油を手にとっては、「醸造期間が違うのはなぜ?」「値段が高いほうがおいしいの?」と疑問を感じていました。

そこで今回は、醤油について学べるという埼玉県川島町の体験型複合施設「金笛(きんぶえ)しょうゆパーク」へ! 施設を運営する「笛木醤油」12代目当主の笛木吉五郎(本名・笛木正司)さんを取材し、伝統的な醤油作りの工程や、同パークを作った理由、未来を見すえた活動「100年プロジェクト」などについて話を伺いました。

「いこーよとりっぷ」では、その取材内容を全2回に分けてご紹介。前編の本記事では、「金笛しょうゆ楽校」と題した工場見学の様子をレポートします。醤油の不思議や驚きがギュッとつまった授業は、年齢問わずワクワクする面白さ。親子そろって醤油博士になれること間違いなしです♪

100年後の食卓においしい醤油を!笛木社長のインタビューはこちら

「金笛しょうゆパーク」とは?

小江戸・川越の中心地から車で約15分、埼玉県のほぼ中央に位置する川島町は、四方を川に囲まれた自然豊かな町。その西南エリアにある笛木醤油は、木桶で仕込む昔ながらの製法を守り続ける醤油蔵です。

創業230周年の2019年には、食べる・学ぶ・買う・遊ぶをテーマにした「金笛しょうゆパーク」をオープンしました。約1年半で総来場数5万人、工場見学の参加者が1万7千人を超える話題のスポットです。

「金笛しょうゆパーク」のスポット情報はこちら!

授業形式の工場見学「金笛しょうゆ楽校」に入学!

人気の工場見学は、「金笛しょうゆ楽校」という名前の通り「日本一楽しく学べる学校」をコンセプトにしたもの。今回は、12代目当主の笛木吉五郎さんが先生として案内して下さいました。

見学前に配布されるテキストでは、醤油作りの工程を社会、国語、理科、図工…と、学校の教科に見立てて楽しく解説。

「小麦や大豆から、なぜ液体の醤油ができるの? という醤油の不思議がわかりやすく伝わるよう、試行錯誤を重ねて作りました」と笛木さん。写真&イラスト満載のページからも、その熱い想いがグングン伝わってきます。麹菌のコウジくんや酵母菌のコボ丸など、登場するキャラクターたちもチャーミング♡

それでは、テキストを片手に、いざ金笛しょうゆ楽校へ入学します!

エアコンがなくても涼しい!?土蔵ってすごい!

蔵の天井を見上げると、明治時代の立派な梁が!
蔵の天井を見上げると、明治時代の立派な梁が!

まず最初に、施設の門を入ると正面に見えてくる蔵の中へ。あれ? 外より少し空気が冷たいような…。

「ここは7代目の吉五郎が明治16年に建てた土蔵で、大切な原料の保管庫として使われています。土蔵造りの建物って、エアコンがなくても一年中気温が一定に保たれるんですよ」(笛木さん)

へぇ、土蔵ってすごい! と感心したところで、笛木さんからお醤油クイズ!

「お醤油は何から作られているでしょうか。原料をお答えください!」

参加者A:「◯◯!」
笛木さん:「正解っ」
参加者B:「×××?」
笛木さん:「おっ、すごいですね」
参加者C「△△!」
笛木さん:「素晴らしいですね~正解!」

お醤油のいい香りを作るのに欠かせない原料といえばコレ!
お醤油のいい香りを作るのに欠かせない原料といえばコレ!
生まれて初めて見た麹(こうじ)菌。サラサラとしたパウダー状でした
生まれて初めて見た麹(こうじ)菌。サラサラとしたパウダー状でした

参加者の知識を持ち寄り、なんとか全問正解! テンポの良いやり取りを通じて、大人の私も小学校の生徒に戻った気分になりました。こんなに楽しい授業だったら、子供時代の私はもっと勉強が好きになっていたに違いない。

この後も何度かクイズが出題され、みんなで驚いたり笑ったり。参加型の楽しみがあるのも金笛しょうゆ学校の魅力です。

リンゴ?バナナ?醤油の香り成分は300種類以上

吉野杉の木桶には「未来に繋ぐ100年プロジェクト」のイベント参加者によるメッセージが
吉野杉の木桶には「未来に繋ぐ100年プロジェクト」のイベント参加者によるメッセージが

次は、醤油づくりで一番大切な「製麹」(せいぎく。麹造り)を行う「麹蔵」に移動。蔵に足を踏み入れたとたん、醤油に甘みを足したような香りが鼻をかすめます。

伝統的な醤油作りに欠かせない木桶の寿命は約100年。ここにあるのは、約50年ぶりに新調した木桶です。豊かな食卓を未来に残すために笛木醤油が取り組む「100年プロジェクト」の1つとして、2016年に作られました。

中をのぞくと、醤油とリンゴが混ざったような香りがふわり。

「醤油には300種類以上の香り成分が含まれていて、人によってチョコレートやバニラ、バナナやリンゴの香りを感じるんですね。パパが飲んでるお酒のにおい! という子供もいます」(笛木さん)

再びクンクンと嗅いでみると、かすかにアルコールとバナナの香りが! 見学する日によっては、工場内で蒸し上がる大豆や、焙煎される香ばしい小麦の香りも体験できるそうですよ。

醤油作りの主役=微生物を手伝うのが職人の仕事

色の違いは熟成度の違い。仕込んだばかりのもろみは黄色く、熟成が進むほど茶色くなり量も減っていきます
色の違いは熟成度の違い。仕込んだばかりのもろみは黄色く、熟成が進むほど茶色くなり量も減っていきます

最後に、もろみを仕込んだ木桶が38本並ぶ仕込み蔵をガラス張りの通路から見学。ここでは、熟練した職人さんが木桶の中のもろみを混ぜる「かいつき」を行い、微生物による発酵を適度に促しながら熟成させています。

木桶が床に埋まっている様子をミニチュアで解説
木桶が床に埋まっている様子をミニチュアで解説

「醤油は温度管理をして半年で完成させるのが一般的です。でも、伝統的な製法を守る笛木醤油では、温度管理をしないのが特徴。熟成に1年から3年かかります」(笛木さん)

職人さんは、長年培った勘を頼りに、木桶ごとの特徴や、位置による微妙な室温の差までふまえて、混ぜる頻度や混ぜ方を変えているそうです。

悪口を言うと味が落ちる!?「笑顔」がおいしさの決め手

さらに、「もろみの中の微生物は、人の声や雰囲気などを感じ取っていると思います」と笛木さんから驚きの発言が。

「科学的には証明できませんが、見学通路沿いの桶のほうが奥よりもいいお醤油ができるんですよ。祖父がよく言っていました。仕込み蔵に入る人は悪口や汚い言葉を使っちゃいけない。嫌なことがあっても笑顔で作業をしなさい、って」(笛木さん)

木桶の中のもろみを混ぜる「かいつき」は、酵母や微生物に空気を送る大事な作業
木桶の中のもろみを混ぜる「かいつき」は、酵母や微生物に空気を送る大事な作業

笛木さんも、毎日笑顔で微生物たちとコミュニケーションをしているそう。

「毎朝、扉を開けるとプチプチ~って発酵の音が返ってくるんですよ。その音で、今日は元気がないかな? と変化を感じ取り、適切に対処しています」(笛木さん)

愛情を注ぎ、変化を感じ取る…。醤油作りって、なんだか子育てと似てるなぁと思いながら、ふと木桶に目をやると、もろみの表面がプツプツと泡立っていて、あいづちを打ってくれたかのよう。

元気に働いている微生物たちと、おしゃべりできたような気がした瞬間でした。

我が子のように大切に育てられた醤油の味わいは?

約45分間の楽しい見学タイムはあっという間に終了。そのあとは、木桶作りの醤油を実際に味わうため「しょうゆ蔵のレストラン」へ。

注文したのは「いちごバウムサンデー」(480円)。川島町産のいちごをたっぷり使った「木桶バウム いちご」と、ミルクソフトのサンデーに、甘辛な「スイーツしょうゆ」をひとかけすると、新感覚のスイーツに変化して高級感も5割増し!

その至福の味わいに、気づけば何度も「はぁぁ~おいしい~♡」とつぶやいていました。

お土産には、笛木さんおすすめの「金笛 再仕込生醤油」(150ml464円)を購入。仕込蔵で3年間熟成し、火入れをしないで丁寧に圧搾しているため、麹や微生物がいっぱい生きているのだそうです。

自宅に戻り、小皿に生醤油を少し垂らしてみたところ、まずその艶やかさに驚きました。ふだん使っている生醤油とは違う、深い色と芳醇な香り。刺身にほんの少しつけ、口にすると、心までゆるゆるほどけていくような味わいにうっとり…。

木桶のなかで、ぷつぷつとおしゃべりしていた微生物くんたちが、本当にいい仕事してる! 愛情いっぱいに作られている様子を見たあとだけに、そのおいしさは格別でした。

続く後編では、笛木さんが金笛しょうゆパークをオープンした深いワケを掘り下げます。伝統的な日本の食を未来に繋げるために何ができるのか、私たち「いこーよとりっぷ」と一緒に考えてみませんか?

「金笛しょうゆパーク」のスポット情報はこちら!

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