革細工職人が直接指導!小物入れ&
ペンケース作り【イベントレポ】
「いこーよとりっぷ」の姉妹サイト「未来へいこーよ」では現在、革細工(墨田区)や江戸切子(江東区)といった「東京のものづくり」をテーマにした子供向け職業体験プログラムを開発しています。
今回はバッグや財布などの革製品を製造・販売している「大関鞄工房」(東京都墨田区緑2-13-5)が舞台。モニター親子が革細工職人に弟子入りし、小物入れとペンケースの制作を体験しました。
好きな革を選んで作る楽しさだけでなく、実際に製品が作られる工房で、職人の技術や専用の機械を使う場面が見られるなど、学びにつながるポイントもいろいろ。
思い出に残る体験の模様をレポートします。
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「弟子入り」で大人と子供が「対等」にモノづくりを楽しむ空間ができる
今回の体験には大人2名、子供3名のモニターが参加。はじめに、大関鞄工房の代表を務める大関敏幸(おおぜきとしゆき)さんから、弟子入りの心構えについてお話がありました。
「皆さんには、本日一日、革細工職人である私の弟子になってもらいます。弟子に年齢は関係なく、大人の方もお子さんも対等の存在です。大人の方は、特にこの体験中は子供に自分の意見を言わないように注意してください」(大関さん)
工房の名前が書かれたエプロンに袖を通し、弟子入りの準備は完了!
墨田区で革細工が盛んになった理由は?
体験に入る前に、墨田区でなぜ革細工がさかんに行われるようになったかを、紙芝居を使って説明します。
墨田区は革を扱うところや革製品を作る会社、販売する会社が日本で最も多く集まっているまち。その理由は江戸時代の墨田区の地図に隠されていました。
現在は一部が埋め立てられたりしていますが、江戸時代のこの場所は、さまざまな大きさの川が縦横に走っている土地でした。当時は船や馬車で物を運んでいたため、水路がたくさんあることは物を運ぶのにとても便利だったのです。
明治時代になると軍隊や警察、郵便局員たちが革靴を履き始めるようになり、それにあわせて革のカバンも作られるようになっていきました。それが墨田区で革細工が盛んになった理由です。
さらに靴などの革製品だけでなく、メリヤス(布製品)、マッチ、レンガ、石鹸、歯磨き粉などの工場ができ「ものづくりのまち」としてさらに発展し、今に至ります。
【小物入れ作り:ステップ1】好きな素材と色の革を選ぶ
墨田区で革細工が盛んな理由を知ったあとは、革細工職人にさまざまな仕事があることも学びました。
そしていよいよ、実践となる小物入れ作りに取り掛かります。
まずは材料となる革選びから。豚や牛などさまざまな種類や色、大きさの革が用意されています。
大関さんから、「大人はつい口を出したくなってしまいますが、ここでは『自分で選んだものが正解』です。何より『自分で好きなものを選んだ』という経験を子供にさせたいので、けっしてお子さんが選んでいるときに口を出さないように」というお話がありました。
それを踏まえて、参加者は実際に手触りを確かめたり色を見比べたりしながら、自分の作品に使う革を選びました。
【小物入れ作り:ステップ2】革のトコ面を滑らかに!職人のこだわりを体感する
革には表裏があり、ツルツルとした「銀面」と毛羽立った「トコ面」でできています。
そのトコ面をトコノールという仕上げ剤を使って滑らかにする作業を行います。
まずは指や布を使ってトコノールを塗り広げていきます。塗る方向は、トコ面にある毛の流れを見て決めるのがポイント。
トコノールが半乾きになったら、ガラス板で革をこすります。すると、みるみるうちにツヤが出て、手触りがよくなってくるので、大人も子供も夢中になって革をこすっていました。
大関さんによると「この作業はやればやるほどきれいに仕上がります。でも、職人にとっては『どこまでやるか?』を意識するのも大事です。時間をかければいいものになるけれど、今作っているものを売り物として考えたときに、どこまでやるのが正解か。自分が納得するレベルと、かけられる時間を計算して作っています」とのこと。
限られた時間の中で、最大級の成果をあげる職人さんの意識の高さを感じた瞬間でした。
【小物入れ作り:ステップ3】四隅をカシメで止めて完成!
トコ面をなめらかにしたら、四隅を「カシメ」と呼ばれる留め具で固定します。このとき、革を少し濡らすと曲げやすくなります。
大関さんは革の特性を説明しつつ、「自分が持っているバッグや財布などが水で濡れたときは要注意です。濡れたまま放置していると形がゆがんだり、曲がったりしていまいます。雨などで濡れたらよく拭いて、元の形のまま乾かしてください」と、普段使っている革製品を長持ちさせるコツも教えてくれました。
カシメにはオスとメスがあり、2つをカチッとあわせたあとにハンマーでたたくと固定されます。大きな力は必要ありませんが、テーブルを傷つけないようにマットと専用の台の上で行います。こうした道具にふれるのも良い機会です。
小物入れが完成! しっかりとトコ面を磨いたこともあって、ツヤツヤとした光沢となめらかな手触りに仕上がりました。
【ペンケース作り:ステップ1】2枚の革と2枚の布地を選んで「ゴムのり」で接着する
続いてはオリジナルのペンケース作りにトライします。
ペンケースの表面と裏面になる革を各1枚と、裏地になる生地を各1枚選びます。
ここも参加者の自由な発想とセンスが問われる場面! 4枚選ぶとなると、子供よりもむしろ大人のほうが選ぶのに時間がかかっていました。
革に紙製の型をあわせて、型の内側のラインに沿って「銀ペン」で印を2枚分つけます。
「銀ペン」は革細工職人がよく使う道具のひとつで、比較的柔らかい革でも線や印が書きやすい銀色のインクが出るボールペンです。
印をつけたらヘラでゴムのり(革同士をくっつける接着剤)をつけていきます。その後5分ほど待ち、指で触ったときに糸が引かなければ接着のタイミング。裏地の革を貼って固定します。
【ペンケース作り:ステップ2】ペンケースに穴を開けて縫い合わせる
次は、ペンの挿し込み口となる穴を開ける作業。穴の形は「ひょうたん」と「ハート」のどちらかを選びます。
革に穴を開ける工程には、専用の型と機械を使います。ここは難易度が高いので師匠である大関さんが担当。参加者は、すぐそばで職人の手仕事を見届けます。
大型の機械に型をセットし、革を置いてワンプッシュで穴が開きました。電源を入れたときの大きな音や、瞬時に穴を開ける様子などは工房ならではの風景です。
穴を開けたら、表革と裏革を貼り合わせます。だいぶペンケースらしくなってきました。
くり抜いたひょうたんやハートの形をした革の部分は、穴を開け、紐を通してペンダントやチャームにします。作業の工程で余ってしまう小さな部品も可能な限り活用する革細工職人の知恵が発揮された場面です。
貼り合わせたペンケースを出来上がりの形に裁断し、周囲を糸で縫います。ここも手で縫い合わせるのはかなり大変な作業なので、革専用のミシンで大関さんが縫い合わせます。
ペンケースの周りを糸がぐるりと一周して元の場所に戻ってくる、その早わざに子供も大人も目が釘付けです。
早いだけでなく、縫い始めた場所と終点がピッタリ重なる正確さも見事。糸の始末をしてしまえばミシンをかけ始めた場所がどこかわからなくなり、見た目がとてもきれいです。
仕上げに余っている糸を切って、きれいに収めるテクニックを教えてもらいました。
縫い目がそろっているかどうかも職人の仕事の丁寧さを見抜くポイント。製作を通して、革製品の良し悪しまでわかるようになりました。
【ペンケース作り:ステップ3】紐をつける部品をカシメで止めて完成!
紐と留め具は革製の「小物入れ」に入っています。ここも職人さんの“粋な心配り”。先ほど自分が作ったのと同じタイプの小物入れを実際に使うことで、家に帰ったらどんなものを入れるか想像しやすくしているのです。
自分だけの小物入れとペンケースが完成! 自分でさまざまなパーツを選び、丹精を込めて作り上げたオリジナルアイテムに、参加者の喜びもひとしおでした。
いろいろな動物の革を触る体験も
作業終了後には、牛や豚のほかにヘビやワニなどの爬虫類、カエルなどの両生類の革を実際に触ってみる時間も。
製品や部品になっていない革を見ると、動物からなるべくきれいに、たくさんの皮を取っていることがわかります。
「すべての革製品は動物たちの『命』をいただいてできています。だからこそ、バッグや財布などは手入れをしてなるべく大事に使ってください」(大関さん)
大人と子供が平等に同じテーマでオリジナルの革細工を作るだけでなく、革細工の歴史や物を大事に使うことへの学びにつながるイベントとなりました。
このイベントは2023年夏の本格稼働に向けて、現在鋭意ブラッシュアップ中です。大人も子供も楽しくて学びのあるイベントにしていきますので、開催時はぜひご参加ください。
記事を書いた人
いこーよとりっぷ編集部
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