![常滑市の「世界のタイル博物館」へ<br/>タイルが面白くなる見どころを紹介](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/cover_image/image/3010/normal_FotoJet__17_.jpg)
常滑市の「世界のタイル博物館」へ
タイルが面白くなる見どころを紹介
こんにちは。タイルライターの金藤です。建物の壁や床、店先でキラリと輝く街のタイルに魅せられ、気づけばタイルの世界にどっぷり! そんな私のおすすめ“タイルスポット”をご案内します。
明治から昭和時代にかけて、土管とタイルの一大産地だった愛知県常滑市(とこなめし)。そんな“やきもののまち”に建つのが「INAXライブミュージアム」です。
今回は、ミュージアム内にある「世界のタイル博物館」をピックアップ! 親子でタイルを見ることがもっと楽しくなるポイントをご紹介します。
「INAXライブミュージアム」とは
![「INAXライブミュージアム」の施設内に「世界のタイル博物館」があり、ミュージアムショップやレストランも併設しています](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/content_image/image/15661/pc_show_original.jpg)
やきもののまち・常滑のものづくりの心に触れる体験ができる「INAXライブミュージアム」は、敷地内にある6つの館をめぐりながら、観て、触れて、感じて、学び、創りだす、体験・体感型のミュージアムです。ここに来る前と来た後では、やきものに関する知識量が別次元のレベルになっていると思います!
例えばやきものの原材料でも、粘土、陶石、長石など違いはいろいろ。昔のタイルがどんな手法で作られていたかなど、研究の過程をパネルなどで見ることもできます。
![やきもの用の粘土の球を削り、色をのせて、磨いていく「光るどろだんごづくり」体験(画像)や、モザイクタイルを使った作品づくりは子供にも大人気です](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/content_image/image/15662/pc_show_dorodango.jpg)
2019年には「窯のある広場・資料館」がリニューアル。約100年前に建造された窯の中で、土管焼成の様子をプロジェクションマッピングで体感できるようになりました。また、「光るどろんこだんごづくり」体験など、土を知り尽くした常滑でないとできないことばかり!
施設内にはレストランもあり、親子で一日ゆっくりと過ごせます。
「INAXライブミュージアム」のおでかけ情報はこちら(姉妹サイト「いこーよ」)
「世界のタイル博物館」のタイルとは
![「世界のタイル博物館」の入口。1階と2階に展示室があります](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/content_image/image/15663/pc_show_%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9.jpg)
「世界のタイル博物館」には、約7,000点のタイルが収蔵されています。そのうち約6,000点がタイル研究家の山本正之さんが蒐集(しゅうしゅう:研究のために集めること)し、常滑市に寄贈したものなのだそう。
LIXIL(当時のINAX)は、常滑市からその管理・研究と一般公開の委託を受けて、1997年に「世界のタイル博物館」を開設しました。
![アール・ヌーヴォーやアール・デコの様式でデザインされたタイル。19世紀末から20世紀初のタイルは、この博物館のなかではまだまだ新しい時代のもの](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/content_image/image/15664/pc_show_%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%B3.jpg)
寄贈されたタイルは、山本さんが砂漠や遺構から見つけたもの、譲り受けたもの、オークションで落札したものなど、縁があって集められたものばかり。
紀元前から近代まで、どこかの建物や誰かの手で残されてきたと思うと、ここで鑑賞できることが奇跡のように感じます。
世界中のタイルの歴史が詰まった珍しい博物館
![江戸時代末より愛知県瀬戸市でつくられるようになった陶製タイル「本業敷瓦」は、明治以降に西洋からの転写技術を取り入れた洋風デザインが人気となり、水まわりを中心に広く使われるようになったそう](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/content_image/image/15665/pc_show_%E7%80%AC%E6%88%B8.jpg)
やきものと建築との出会いは5,500年も前のこと。その後、エジプトでタイルが誕生し、イスラーム文化とともに発展。ヨーロッパ各地の建築でタイルが使われるようになりました。
一方で、日本にタイルの技術が渡ってきたのはおよそ1,400年前。ヨーロッパからタイルが伝わったのは明治の文明開化期ですが、それ以前に日本で用いられていた敷瓦(しきがわら)と呼ばれるやきものが、日本のタイルの始まりといわれています。
エジプトで誕生したあと、それぞれの国の技術と知恵で発展してきたタイルの文化が、何百年、何千年の時を経て、常滑の地に渡ってきたわけです。この博物館がどれほど貴重か、そのレア度がわかりますよね。
タイル好き推奨!よく見てほしい3つのタイル
「世界のタイル博物館」は、その名の通り、世界各地のタイルに出会えるスポットです。
館内には、宝石のような美しい装飾タイルが1階と2階に展示されています。それぞれの国の良さがありますが、見どころをおさえておくと、もっとタイルが好きになるかもしれません。
【注目1】世界最古!エジプトのタイル
![トルコ石を人工的に作ったともいわれるエジプトのタイル。2階展示室では実物を、1階ではピラミッド内部の通廊壁を再現したコーナーもあります](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/content_image/image/15666/pc_show_%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%9C%80%E5%8F%A4%E3%81%AE%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%AB_%E3%82%A8%E3%82%B8%E3%83%97%E3%83%88_071.jpg)
まず見逃せないのが、世界最古といわれているエジプトのタイルです。
同館には、階段ピラミッドで発見された、紀元前2,650年頃のタイルが展示されています。王の墓室の通廊壁で使用していたタイルといわれていますが、紀元前にこんなに美しいエメラルド色のやきものが使われていたことに驚きです。
【注目2】文様に違いがあるオランダのタイル
![オランダのタイルは中央に身近なモチーフが描かれているのが特徴です。これは四隅がすべて同じ文様ですが、展示品から違う文様を探して、見比べてみると発見があるはず!](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/content_image/image/15667/pc_show_%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80.jpg)
タイルは時間の経過とともに色褪せることがないため、どんな方法で年代を判別しているのか気になるところです。
例えば、オランダ産のタイル(上の写真)は、四隅の文様が東洋風かフランス風かなど、描かれたコーナー・パターンで制作年代の手がかりになるとか。
四隅をよく見ると、フランス王室のユリ紋章や中国文様の雷文(らいもん)などが描かれています。事前に世界の文様を紹介した図鑑や書籍などを見て、紋章や文様を頭に入れておくと違いがわかりやすいです。
【注目3】作り方に注目!モロッコのタイル
![モロッコのカットワーク・モザイクタイルの展示コーナーの解説を読むと、どれほど手がかけられているかがわかります](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/content_image/image/15668/pc_show_%E3%83%A2%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%B3.jpg)
タイルの作り方は国によって違います。完成までの工程を知ったら、見る目が変わってしまうのがマグリブ地方にあるモロッコのタイルです。
原料のタイルをハンマーで打ちくだいて星型や多角形のモザイク片をつくり、並べたあとに石膏(せっこう)で固めて幾何学模様に仕上げていきます。これをすべて手作業で…。その様子を想像すると、とてつもない細やかな作業であることがわかりますよね!
精密に復元された“昔のタイル”を見てみよう
研究機関としての役割も担う館内には、“昔のタイル”を復元したコーナーも。その時代の土と釉薬(ゆうやく)に近づけるため、試作は手探りで行います。
ここからはその見どころを紹介します。
【見どころ1】何本使っているの?芸術的な復元タイル
![模様のなかに見える点々はすべてクレイペグ。繰り返し現れる模様は計算無しでは作れません](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/content_image/image/15669/pc_show_%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%9A%E3%82%B0.jpg)
1階で再現されているのは、細長い円錐状のやきもの「クレイペグ」で構成された空間です。
古代メソポタミアの人々は、これを使って美しい模様を描いていたとか。当時の様子を再現するために使われたクレイペグの数は5万5,000本。その数を知ったら、ちょっと膨大すぎて倒れそう!
【見どころ2】1階と2階をつなぐ階段にも注目
![スパニッシュ・マヨリカと呼ばれる手書き技法を使ったポルトガル製のタイルで彩られた階段。このような階段装飾は、シチリア島の大階段などでも見ることができます](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/content_image/image/15671/pc_show_%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%83%88%E3%82%AC%E3%83%AB.jpg)
2階へ続く階段の模様は、17世紀につくられたタイルパターンが復元されたもの。四角の部分はダイヤモンドパターンと呼ばれる絵柄です。
目の高さが大人より低い子供も、この美しい蹴上がりが目の前に広がれば興味をもって階段を上ってくれそう。
【見どころ3】張られてこそ模様になるタイル
![1階にあるタイル張りのドーム天井。12種の形と7色のモザイクタイルを組み合わせたタイルパターンが復元されています](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/content_image/image/15672/pc_show_pixta_50268776_M.jpg)
タイルを見るときのポイントとして、“張られた状態”で鑑賞することがとても大事だと思っています。
特に、上の写真のようなさまざまな形のタイルを敷き詰めてできた繰り返し模様は、空間のなかに張られてこそ、その美しさが際立って見えます。
今回ご紹介した他にも、展示品はまだまだあります。世界35の国と地域から集められたタイルの一部を鑑賞できる「世界のタイル博物館」は、子供の学びの場としてもぴったり。
施設の周辺にある「やきもの散歩道」とあわせて、親子で常滑へでかけてみませんか。
■INAXライブミュージアム「世界のタイル博物館」
住所:愛知県常滑市奥栄町1-130
営業時間:10:00~17:00(最終入館は16:30)
休園日:水曜(祝日は開館)、年末年始
アクセス:【電車】名古屋鉄道常滑線、空港線「常滑駅」から徒歩で約25分
料金:一般700円、高校生・大学生500円、小・中学生250円、70歳以上600円※障がい者手帳所持者・付き添い1人までは無料
記事を書いた人
![](http://de5c3ya1fcot1.cloudfront.net/uploads/avatar/image/104/square_%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB.jpg)
金藤ミチコ
彩り豊かな街タイルを求めて各地を巡るタイル大好きライター。歩きながら素早くタイルを探し出すのが得意。タイルの絵付けもしています。
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