歴史あるやきもののまち愛知・常滑
2つの「やきもの散歩道」散策へ
こんにちは。タイルライターの金藤です。建物の壁や床、店先でキラリと輝く街のタイルに魅せられ、気づけばタイルの世界にどっぷり! そんな私のおすすめ“タイルスポット”をご案内します。
今回は、古くからやきものの産地として知られる愛知県常滑市(とこなめし)にある「やきもの散歩道」をご紹介します。魅力あふれる常滑のまちを親子でめぐってみましょう。
千年の歴史を持つ“やきもののまち”
愛知県の知多半島に位置する常滑市は、平安時代の末期から千年もの歴史があるやきもののまち。常滑窯は、日本六古窯(瀬戸、信楽、越前、丹波、備前、常滑)のひとつで、そのなかでももっとも古く大きな産地でした。
現在でも、名鉄常滑線、空港線「常滑駅」周辺は、焼きもののまちのノスタルジックな雰囲気を思いっきり実感できるエリアです。土管(どかん)からタイルまで、目に映る色彩の変化が楽しめます。
日本の窯業を盛り立ててきた「常滑焼」
「常滑焼」の歴史をざっと振り返ると、平安時代は甕(かめ)や壺、江戸後期には急須(きゅうす)、明治時代には衛生陶器が生産されています。
そして、大正時代には土管とタイルの一大産地へと発展! 1923年(大正12年)に竣工した「帝国ホテル旧本館(ライト館)」のタイルも、常滑の職人が手掛けていたんですよ。
常滑はタイルなどの建築陶器の街であると同時に、今なお急須の産地として知られています。そういえば、私の実家にも常滑焼の朱色の急須がありました。
朱色の土は酸化鉄を多く含んでいるので、常滑焼の急須は茶葉の渋みを抑え、うまみを引き出してくれるそう。
常滑焼の歴史と魅力を知る「やきもの散歩道」
こうした産地の特徴を作り手の方から直接聞けるのが、常滑市の観光スポットのひとつ「やきもの散歩道」です。
「やきもの散歩道」は2コースがあり、常滑焼の王道コースを体感したい人には1.6km のAコースが案内されています(所要時間は約1時間)。工房やショップを見て歩きながら、常滑焼を象徴する土管坂など観光スポットが散策できますよ。
常滑焼を深く知りたい人には、Aコースからさらに足を延ばしてINAXライブミュージアム、とこなめ陶の森をめぐる4kmのBコースがおすすめです(所要時間は2時間30分)。どちらのモデルコースも観光マップをたよりに自由に歩くことができます。
【やきもの散歩道Aコース】ノスタルジックな雰囲気を満喫
まずは、「常滑焼」がもっとも盛んだった昭和初期の窯業集落の一帯が今も残る「やきもの散歩道Aコース」をご紹介します。どんな注目スポットがあるのか、早速歩いてみましょう!
■やきもの散歩道Aコース(約1.6km、約1時間)
常滑市陶磁器会館
数多くの常滑焼の作品を販売しています
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煙突のある風景
常滑を象徴する景色を一望できます
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廻船問屋 瀧田家
江戸時代から明治時代にかけて廻船業を営んでいた瀧田家の趣ある住宅
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土管坂
明治期の土管と昭和初期の焼酎瓶が左右の壁面をおおう風情ある道
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登窯広場展示工房館
「両面焚倒焔式角窯」(りょうめんだきとうえんしきかくがま)を保存展示しています
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登窯(陶榮窯)
現存するなかでは国内最大級の登窯(陶磁器等を大量に焼成するための窯)
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ゴール
「常滑市陶磁器会館」からスタート!
入口がわかりにくいので、まずは「常滑駅」の観光案内所で地図をもらって出かけましょう。駅前の通りを進むと巨大な招き猫が見えてきます。その先にある「常滑市陶磁器会館」がスタート地点です。
頭上に現れる巨大な招き猫に「え、いきなり猫!」と驚きますが、常滑は縁起ものの「招き猫」でも生産日本一だとか。本当、引き出しが多いまちですね。
「常滑市陶磁器会館」の脇道を奥へ奥へと進んでいくと…。まるで昭和の日常を見ているような懐かしい風景が広がっています。
映画の舞台にもなった「土管坂」
煙突のある風景や「廻船問屋 瀧田家」の先に見えてくるのが、見どころのひとつ土管坂です。Netflixのアニメ映画「泣きたい私は猫をかぶる」の舞台にもなっています。
壁も印象的ですが、見てほしいのが足もと。土管を焼くときに使っていた廃材を敷いて滑らない工夫をしているとか。とにかく坂が多い場所なので、滑りやすい雨の日は助かります。
土管坂をさらに進み、「登窯広場展示工房館」を越えると、1974年(昭和49年)まで活躍していた日本最大級の登窯が見えてきます。
10本の煙突と8つの焼成窯があり、重たい耐火煉瓦(れんが)を積み上げてつくったもの。登窯の周辺には陶房もあるので、常滑焼について詳しく知りたいときは寄り道するのも楽しいですよ。
Aコースは、地図を見ながらでも迷うくらい細道がいくつも交差しているので、気を抜くと散歩道のルートを外れていることも。迷ったときは“地元の人に聞く!”これが無駄に疲れないポイントかなと思います。
【やきもの散歩道Bコース】常滑焼の歴史、産業を学ぼう
「やきもの散歩道Bコース」は、Aコースに加えて、ミュージアムや資料館などの主要な見学施設をめぐり、常滑焼の歴史などを学べるコースです。
■やきもの散歩道Bコース(約4km、約2時間30分)
常滑市陶磁器会館(Aコースを散策)
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INAXライブミュージアム
6つの館で構成された、ものづくりを見て、学んで、体験できる参加型の施設
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とこなめ陶の森 資料館
常滑焼の歴史を紹介する施設
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とこなめ陶の森 陶芸研究所
古常滑の大壺や山茶碗から江戸時代の急須や花器などが展示されています
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ゴール
土とやきものの魅力を体感できる「INAXライブミュージアム」
「常滑市陶磁器会館」をスタートし、Aコースを巡った後、南へ向かってしばらく歩くと「INAXライブミュージアム」が見えてきます。
「いこーよとりっぷ」の姉妹サイト「いこーよ」の2023年版「東海の博物館・科学館人気ランキング」で、4位にランクインしている人気のスポットです。
6つの施設で構成される「INAXライブミュージアム」ですが、イチ押しは「世界のタイル博物館」。世界各地から集めた装飾タイルが7,000点以上も収蔵されているんです。珍しいものでは紀元前のタイルもあるんですよ!
また、晴れた日なら、屋外展示のテラコッタパークもおすすめです。
イタリア語で「焼いた土」を意味するテラコッタ。パーク内では、主に大正時代末期から昭和の初期まで、鉄筋コンクリート造の建築に取り付けられたテラコッタを間近に見ることができます。
展示のほかにも、小さなサイズのタイルを組み合わせてつくる「モザイクタイルアート」や、やきもの用の粘土の球を削ってピカピカに磨いていく「光るどろだんごづくり」など、親子で参加できる体験プログラムも充実。挑戦してみると、土やタイルを見る目がきっと変わるはず。
さまざまなメニューが用意されているので来館前に公式サイトをチェックしてみてくださいね。親子で作品を見て、体験で学びを深めながらのんびり過ごしてみましょう。
■INAXライブミュージアム
住所:愛知県常滑市奥栄町1-130
営業時間:10:00~17:00(最終入館は16:30)
休園日:水曜(祝日は開館)、年末年始
アクセス:【電車】名古屋鉄道常滑線、空港線「常滑駅」から徒歩で約25分
料金:一般700円、高・大学生500円、小・中学生250円、70歳以上600円
※障がい者手帳所持者・付き添い1人までは無料
資料館&研究所で歴史を学ぶ「とこなめ陶の森」
「INAXライブミュージアム」から徒歩で約7分。「とこなめ陶の森」では資料館と研究所の見学ができます。常滑焼の歴史を学びたい親子におすすめ!
常滑焼の千年の歴史を知るなら「とこなめ陶の森資料館」へ。
常滑焼が得意としてきた甕や壺、土管などの大型製品の展示をはじめ、常滑焼に使っている道具や陶芸の手順がよくわかる展示が並んでいます。人の背丈よりも大きい2,000リットルの大甕など、なかなか出会えない陶器が見学できます。
「陶芸研究所」は、美しい紫色のタイルで彩られた外観が魅力のスポット。平安時代末期から鎌倉時代の大甕や、江戸時代から現代までの名工の作品が鑑賞できます。展示室の見学は無料です。
展示もさることながら、タイル好きとしては壁面や床のタイルも見てほしいもののひとつ。常滑だからこそのハイレベルなタイルづかいにうっとりせずにはいられません。
また、館内の工房では陶芸家を目指す若者が腕を磨いています。世界的に活躍している陶芸家を輩出している場所でもあるんですよ。
■とこなめ陶の森
住所:【資料館】愛知県常滑市瀬木町4-203/【陶芸研究所】愛知県常滑市奥条7-22
営業時間:9:00〜17:00
休館日:月曜(祝日の場合翌日)、年末年始
アクセス:【電車】名古屋鉄道常滑線、空港線「常滑駅」から車で約5分、徒歩で約30分
【バス】名古屋鉄道常滑線、空港線「常滑駅」から知多半田駅行きバスに乗車、バス停「INAXライブミュージアム前」下車、徒歩で約7分
料金:資料館、研究所ともに入館無料
今回紹介したスポット以外にも、散歩道周辺にはギャラリーやショップ、カフェがあり、建物やタイルの使い方を見るだけでもおもしろいですよ。ぜひ、親子でお気に入りスポットを探してみてくださいね。
記事を書いた人
金藤ミチコ
彩り豊かな街タイルを求めて各地を巡るタイル大好きライター。歩きながら素早くタイルを探し出すのが得意。タイルの絵付けもしています。
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