新島の発酵食「くさや」の加工場で<br/>伝統的なくさや作りを見学!

新島の発酵食「くさや」の加工場で
伝統的なくさや作りを見学!

くさやの里
くさやのさと
見る
東京都新島村

白い砂浜とエメラルドブルーの海が広がる伊豆諸島の島・新島(にいじま)。その特産品といえば、独特な香りと濃厚な旨味を持つ伝統的な魚の干し物「くさや」が有名です。

“魔性の味”とも称され、全国に熱烈なファンを持つくさやの製造加工を行っているのが、新島水産加工業協同組合の「くさやの里」。新島空港から徒歩約13分の場所にある施設です。

今回は、同組合の副組合長であり「池太(いけた)商店」3代目店主の池村遼太(いけむらりょうた)さんの案内で「くさやの里」を見学。新島の人々が生み出した“知恵の結晶”、くさやの製造工程を教えていただきました。

※内容は一部変更または中止になる可能性があります。最新情報および詳細は、公式サイトをご確認ください

「池太商店」を詳しくチェック! 

新島の伝統食「くさや」とは?

干している途中のくさや
干している途中のくさや

くさやは、伊豆諸島の島々に伝わる伝統的な発酵食品。起源については諸説あり、新島が発祥の地という説が有力です。

特有の香りが話題になりがちですが、数ある発酵食品のなかでも特に旨味成分たっぷりの珍味。乳酸菌の一種である「くさや菌」を多く含む健康食としても注目されています。

離島の厳しい暮らしから生まれた“知恵の結晶”

くさやの代名詞的存在、青ムロアジ(画像提供:池太商店)
くさやの代名詞的存在、青ムロアジ(画像提供:池太商店)

くさやの材料は、昔から伊豆諸島で獲られてきた青ムロアジやトビウオなどの魚です。

江戸時代中期の新島では、貴重な食料である魚を長く保存するため、塩水に漬け込んで干物にしていました。しかし、米がとれない新島では塩を年貢として幕府に納めていたので、塩を大量に消費するわけにはいきません。

そこで一度使った塩水に塩をつぎ足しながら繰り返し漬け込んでいくと、だんだんと塩水が発酵。
独特な香りと味を持った 「くさや汁」が生まれたのです。

この発酵液を使った「くさや」の一部は江戸に運ばれ、粋な江戸っ子たちにも珍味として愛されたといいます。

「くさやの里」でくさやの製造工程を見学しよう

池村遼太さんと一緒に「くさやの里」へ。俳優・森繫久彌(もりしげひさや)氏の俳句が彫られた記念碑の前でパチリ
池村遼太さんと一緒に「くさやの里」へ。俳優・森繫久彌(もりしげひさや)氏の俳句が彫られた記念碑の前でパチリ

新島では、くさやを作っている製造元を「いさばや」と呼びます。島内には6軒のいさばやがあり、その大半が新島水産加工業協同組合の加工場「くさやの里」内でくさやを製造しています。

今回は、いさばやのひとつである「池太商店」の3代目店主・池村遼太さんとともに「くさやの里」へ! 施設内を見学しながら、くさや製品の製造工程を教えていただきました。

※施設の見学は無料。事前に事務所に電話で問い合わせてください

【プロセス1】新鮮な魚を開いて水洗い

加工場で作業をする池村遼大さん(左)と、お父さんの池村健一(いけむらけんいち)さん(右)
加工場で作業をする池村遼大さん(左)と、お父さんの池村健一(いけむらけんいち)さん(右)

最初に、魚を一匹ずつ開いて内臓を取り除きます。鮮度が高いうちに、手早く行うのがポイント。

池村さんによると「はらわたは、腐らせて畑の肥料にする」のだとか。いただいた命は大切に、無駄なく使い切ります。

開きにしたら、井戸水で水洗い。血抜きをして汚れを取ります。

「新島は質の良い水に恵まれた島。クサヤ作りには、この清らかな水がとても重要なんですよ」(池村さん)

【プロセス2】くさや汁に漬け込む

1g中に1千億のバクテリア(くさや菌)が住むくさや汁。においは強烈ですが、味はまろやかで旨味があります
1g中に1千億のバクテリア(くさや菌)が住むくさや汁。においは強烈ですが、味はまろやかで旨味があります

続いて、くさや汁に魚を漬け込み発酵させます。漬け込む時間は、魚の種類や仕上げ方によってさまざま。

漬け込みに使ったくさや汁は、再び地下のタンクへ流し込みます。魚の肉片が加わることで、くさや液が再び活性化するのだそう
漬け込みに使ったくさや汁は、再び地下のタンクへ流し込みます。魚の肉片が加わることで、くさや液が再び活性化するのだそう

くさや汁は地下のタンクで低温管理されており、必要な量だけ汲み上げて使います。

くさや汁は、味を決める家宝のような存在であり「先祖から伝わる財産」と池村さん。「池太商店」では、300年余り絶やさずに使っているそうです。

【プロセス3】井戸水で水洗いして乾燥させる

乾燥室から出したくさやをチェック。表面の湿り気や硬さ、乾燥具合を1枚ずつ確認します
乾燥室から出したくさやをチェック。表面の湿り気や硬さ、乾燥具合を1枚ずつ確認します

くさや汁から引き揚げた魚を、井戸水で1枚ずつ水洗い。3つの桶を使って十分洗ったら、形を整えて網に並べ乾燥させます。この時、池村さんは「おいしくなあれ」と心を込めているそうですよ。

最後に、品質を1枚ずつ確認して、サイズや形に応じて1枚売り~数枚セットの真空パックや、加工品などに仕分けます。

天日干しをしていた昔とは違い、冷風乾燥機を使って短時間で均等に乾かすことができますが、大半の工程は昔と変わらず手作業で行われています。

【プロセス4】加工作業

加工品を作る地元の女性たち
加工品を作る地元の女性たち

瓶詰めや箱入りなどの加工品も、主に手作業で作られています。スタッフの皆さんが熟練の手さばきで、焼き上がったくさやの頭と尾をちぎり、骨をとりのぞいていきます。

完成!

「池太商店」の店頭には、オーソドックスな開きタイプのほか、手軽なスティック、箱詰め、瓶詰めなど、さまざまなくさや商品が並びます
「池太商店」の店頭には、オーソドックスな開きタイプのほか、手軽なスティック、箱詰め、瓶詰めなど、さまざまなくさや商品が並びます

パッキングしたら完成です。商品は各いさばやの店頭や、公式サイトなどで購入できますよ。

万人受けする食べ物ではないけれど、「一緒に食べて、くさやほど盛り上がれる食べ物ってほかにない。大人になるとワサビの美味しさがわかるように、くさやも『かっこいい大人になったら味がわかる』みたいな存在にしていきたいですね」と池村さん。

親子で一緒に、新島伝統のくさや作りを見学するとともに、その味と香りを体験してみてください。

とりっぷノート★

新島港(黒根港)の船客待合所にある売店「いさば家」には、いさばや全店の商品がそろっています。ぜひ立ち寄ってみてください♪(いこーよとりっぷライター・岡本ハナ)

記事を書いた人

岡本ハナ

1983年フィリピン生まれ。4児(2男2女)の母。 大学在学中に読者モデルとして活動するかたわら、web制作会社でライターアシスタントとして勤務。現在は、映画や音楽などエンタメ情報、子供関連(不妊治療、発達障がい児など)をテーマに各メディアで執筆。料理下手だが、料理人の夫に感化されて料理&食育を勉強中! 多国籍料理が好き。

スポット基本情報

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スポット名くさやの里
ふりがなくさやのさと
住所東京都新島村川原403
電話番号04992-5-1333
営業時間月~金曜8:30~17:00
※見学可能な曜日と時間も上記と同様
※魚がない日は人がいないため見学不可
定休日土・日・祝日
料金見学無料(要事前予約)
アクセス【車】新島空港から約3分
【徒歩】新島空港から約13分
駐車場駐車場あり
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公開日2023年03月20日/更新日2023年03月20日