市民パワーが炸裂!逗子「池子の森の音楽祭」がつなぐ日本の未来
~長島源さん(『池子の森の音楽祭』主催)インタビュー【後編】~
神奈川県逗子市は「自然と調和したカルチャー」を愛する人々が集うまち。
長い歴史のなかで培った「自分のまちのことは自分たちで」という風土があり、地域を活性化するイベントにたくさんの市民が関わっています。
それを代表するイベントの1つが、例年秋に開催される「池子の森の音楽祭」です。
主催は「逗子海岸映画祭」の実行委員長も務める長島源(ながしま げん)さん。これまでも、さまざまな形で地域の人・文化・食をつなぎ発信してきた長島さんに、同音楽祭の魅力とパワフルで温かな逗子の市民性、次世代へつなぎたいことを伺いました。
まちを元気にするヒントがギュっとつまったロングインタビュー・後編をお届けします。
※「池子の森の音楽祭2022」は10月29日(土)30日(日)に開催される予定です
お話を聞いた人:長島源さん
「逗子海岸映画祭」実行委員長、「シネマアミーゴ」館長。逗子市に生まれ育ち、10代から20代までは葉山・一色海岸にある海の家「Blue Moon(ブルームーン)」や、長者ヶ崎にあったカフェバー「Solaya(ソラヤ)」など、湘南の文化拠点作りに携わる。現在は逗子を拠点に、国内外のさまざまなまちとの文化交流や、地域の文化振興・地域活性化につながるイベントを幅広く開催。モデル、ミュージシャンとしても活躍。
東逗子エリアと「池子の森」の魅力を伝えるイベントを!
神奈川県逗子市は、ファミリー向けの穏やかな海水浴場・逗子海岸(逗子海水浴場)があり、ヨットやウインドサーフィンなどのマリンスポーツも盛んなまち。
JR横須賀線「逗子駅」前の逗子銀座商店街には昔ながらの商店やおしゃれなカフェなどが並び、とても活気があります。
一方JRの線路をはさんで反対側は、神武寺山や鷹取山、「池子の森自然公園」などがあり、深い森と山々が広がるエリア。
「逗子市に住む人も意外と知らないんですが、『池子の森自然公園』には米軍家族住宅があり、僕が子供の頃まで日本人は入れなかった場所なんです」
その後、広大な敷地の一部が日米の共同使用となり、逗子市が整備して2015年に公園として開園しました。
「今も奥のほうには手つかずの自然が残っていて、子連れで遊びに行くには本当にすごくいい公園ですよ」
約70年間も人の手が入らなかった美しい森に脚光を当て、存在を広く知ってもらいたい。その思いとともに、2018年、「池子の森の音楽祭」がスタートしました。
「池子の森の音楽祭」は逗子市民のパワーが集結したイベント
「『池子の森の音楽祭』は逗子市民の力で作り上げる、逗子パワーそのもののイベントなんです」と長島さん。
市民が企画運営を行い、イベント当日は地元にゆかりがあるヒト・モノ・コトが会場を彩ります。
長い年月を経て共同使用が認められたこの場所で、市民がパワーを発揮することで、さらに逗子のまち全体が盛り上がれば…と考えているそうです。
「地元のグルメも多数出店しますし、出演するのも地域につながりのあるアーティストだけ。それでも、ほかの野外フェスに負けないクオリティのライブイベントができる、っていうことをお見せしたいんです」
「踊って、食べて、寝そべって」。家族でのんびり過ごせる音楽祭
会場を訪れる人の多くは家族連れで、来場者数は大人と子供が半々くらいだそう。
「踊って、食べて、寝そべって」というコンセプト通り、大自然のなかに親子の笑顔があふれるピースフルなイベントです。
「あれほど子供が走り回ってる音楽フェスは、なかなかないと思います(笑)。子供向けのワークショップもすごく充実していて楽しいですよ」
「自然保護の観点から、これまで400mトラックがある芝生エリアしか使えなかったんです。でも、アンプラグドの弦楽器くらいならいいかもしれないという話が出てきて。
実験的に演奏して、映像を撮ったり音量をはかったりとステップを踏んだ結果、『何かできそうだ』ってことになったら、奥の森と手前の芝生エリアを連携した内容にしたいですね」
2022年の秋に向けて、すでにさまざまな企画が動き出しているとのこと。親子で豊かな時間をすごせる同イベントに、ますます期待が高まります。
逗子市民は心のハードルが低い!?
1960年代から移住者が多かった逗子市ですが、近年、移住する人がますます増えています。その理由の1つに、ローカル化しやすい(地域に溶け込みやすい)土壌があると長島さん。
「いい例なのが、『スパイス・ツリー』っていう人気のカレー屋さん。彼も東京から引っ越してきて、『アミーゴキッチン』でランチ営業をしているうちにローカルの仲間が増え、自分の店をオープンしたときには皆『地元の仲間が店を始めた!』って感覚でした。『えっ! 逗子に住んでまだ3年目なの⁉』って驚くことが、とても多いですね(笑)」
まるで昔から住んでいるかのように溶け込める文化があるから、移住してきたばかりでも地元に愛着を持ってまちづくりに関わる人が多いのだとか。聞けば聞くほど、逗子ってあったかいまち!
「心のハードルが低いんでしょうね」という長島さんの笑顔も、“逗子人”らしい人懐っこさと温かさであふれていました。
「魅力あるまち」づくりのため市民と行政が協力
市民によるまちづくりが活発になった背景には、「池子の森」が米国から返還されるまでの十数年に渡り、市民による米軍家族住宅反対運動が盛んになった経緯があります。
「この運動を通じて、普通の市民が市長や市議会議員になる文化が生まれました。行政がオープンなのと市民による活動が活発なのは、その頃の遺産なんだと思います」
本来、市民と行政は対等で、役割分担すべき存在。「行政がやってほしい!」と頼ってばかりいるのは建設的じゃない、と長島さんはいいます。
「きちんとコミュニケーションがとれていれば、互いの事情を理解しあいながら話が進んでいきます。逆に『なんで行政がやってくれないの?』と行政任せにしている地域は、どんどん衰退していくでしょうね」
「自分が住むまちのために行動できる」子供が増えることを願って
となると、市民と行政の間でコミュニケーションをとる長島さんのような存在が、ますます地域にとって必要になってきます。
「自分たちの世代で何かが変わらなくても、僕らがやっていることが積み重なっていくことで、次の世代、その次の世代で変わることがあると思っていて。そういう方向に舵を切って、何かが生まれていけばいいですよね」
逗子で育った子供たちが、逗子のまちづくりに関わってほしいということでしょうか。
「必ずしも逗子である必要はないと思うんです。ほかのまちに移住したら、そこで意識を持って活動してくれる大人になってほしい。『自分が住むまちなんだから関わるのは当たり前だよ』みたいなカルチャーが各地で生まれれば、結果的にサスティナビリティーにもつながるし、日本のためにもいいですよね」
このまちを訪れ、積極的に地域に関わる大人の姿を見た子供たちの心には、きっと何かが残るはず。目の前に、明るい日本の未来が見えた気がしました。
記事を書いた人
雨宮あかり
「いこーよとりっぷ」エディター/食べること・飲むこと・音楽が大好きなママ編集者。世界中の音楽フェスを体験すること&ベルギービールの醸造所めぐりが夢です♪ 特技はアロマセラピートリートメントです。
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