
福島・相双地域モニターツアーレポ
親子の体験充実&海鮮グルメを満喫
福島県内の「相双(そうそう)地域」の魅力を体験する、1泊2日のモニターツアーが、2025年8月23日(土)、24日(日)に開催されました!
このツアーには、首都圏に住む6歳~高校生の親子5組が参加。貴重な体験盛りだくさんのツアーの様子をレポートします。
※各施設の情報は取材時の内容であり、一部変更または中止になる可能性があります。最新情報および詳細は、公式サイトをご確認ください
【撮影】栗原美穂
「相双地域」ってどんなところ?

「相双地域」とは、福島県の太平洋沿岸部エリア「浜通り地方」内の12市町村から構成されている地域のこと。
東は太平洋、西は標高600m余の阿武隈(あぶくま)高地に挟まれており、雄大な自然と多様な食資源が魅力です。震災と原発事故からの復興に向けて、新たな地域づくりが進んでいます。
今回のモニターツアーでは、新地町(しんちまち)、相馬市(そうまし)、南相馬市、浪江町(なみえまち)の4つのまちを訪問しました。
新地町
福島県北東部、宮城との県境にあるまち。西には登山客に人気の「鹿狼山」(かろうさん)、太平洋側には遠浅で澄んだ海と美しい砂浜が広がっています。
相馬市
福島県北部の沿岸に位置する相馬市は、国の重要無形民俗文化財「相馬野馬追」(そうまのまおい)が行われる歴史あるまち。日本百景の松川浦も有しています。
南相馬市
福島県北東部にある相双地域最大のまち。相馬野馬追の「神旗争奪戦」の会場で、東に太平洋、西に阿武隈高地が広がります。
浪江町
浜通り地方のほぼ中央に位置するまち。海、山、川に囲まれており、平坦地は温暖な気候で積雪も少なく住みやすい環境です。
4つのまちを1泊2日の親子旅で体験してきました!
【1日目】
「東京駅」からバスで出発(8:00~) → 「いこいの村なみえ」で昼食(12:00~13:00) →「震災遺構 浪江町立請戸(うけど)小学校」を見学(13:10~14:00) → 乗馬・餌やり体験(14:20~15:50) → 「道の駅なみえ」で買い物(16:10~17:00) → 浜焼き体験で夕食&宿泊(18:00~)
【2日目】
笹浸し漁の見学(7:00~)&朝食(8:00~)→「相馬市伝承鎮魂祈念館」見学(9:05~9:25) → 磯ガニ釣り体験(9:35~10:35) → 「浜の駅松川浦」で買い物(10:45~11:15) → 「ホテルみなとや」で昼食(11:20~12:00) → 「鹿狼の湯」で入浴(14:25~15:00)→ バスで「東京駅」へ出発/解散(~19:30)
【1日目】馬とふれあい、震災遺構を訪問&浜焼き体験
モニターツアー1日目は、浪江町で震災遺構を訪ね、南相馬市で乗馬を体験。夜は相馬市に移動して、浜焼き体験で夕食を楽しみました。
【浪江町/震災遺構 浪江町立請戸小学校】奇跡の小学校を見学し防災意識を高める

昼食後、最初に訪れたのは、福島県唯一の震災遺構「浪江町立請戸小学校」です。東日本大震災で大きな被害を受けながらも、倒壊を免れた校舎が当時の姿のまま残されていて、津波の脅威と全員避難の奇跡を今に伝えています。
参加者は「鉄が歪むほどの津波のパワーに驚きました。当時の様子がリアルに伝わってきて、テレビや写真で見るのと実際に来てみるのとでは大違いですね」と声を震わせていました。
■震災遺構 浪江町立請戸小学校
所在地:福島県浪江町大字請戸字持平56
開館時間:9:30~16:30(最終受付16:00)
休館日:火曜(祝日の場合は開館、翌日休館)、年末年始(12月28日~1月4日)
入館料:一般300円、高校生200円、小・中学生100円、未就学児無料
【南相馬市/一般社団法人Horse Value】広々とした馬場で乗馬&餌やりも体験!

南相馬市に移動して、馬とふれあえる施設、 一般社団法人「Horse Value」へ。ここでは「相馬野馬追」に出陣する馬たちが暮らしていて、乗馬や餌やりなどの体験ができます。
大きな馬にまたがると、思った以上に高くてドキドキ。スタッフさんが手綱を引いてくれるので安心して馬場を一周できます。「見晴らしが良くて風が気持ちいい!」と、思わず笑顔に。

餌やり体験でにんじんを差し出すと、馬たちはパクッと勢いよく食いつきます。
最初は「ちょっと怖い…」と戸惑っていた子供たちも、慣れてくると「この子が好き!」とお気に入りの馬を見つけ、何本もにんじんをあげていました。
かわいい馬とふれあい、子供も大人も心癒されるひとときでした。
■一般社団法人Horse Value
所在地:福島県南相馬市小高区川房字南石名坂28-1
体験時間:8:00~18:00(最終スタート17:00)
定休日:公式サイトのカレンダー参照
料金:
・ふれあい乗馬(20分):1人2,000円
・体験乗馬レッスン(15分):無料
備考:体験は予約制、前日18:00まで受付
【浪江町/道の駅なみえ】名産品がたくさん!道の駅で買い物

浪江町に戻り「道の駅なみえ」でお買い物。
2020年に復興のシンボルとしてオープンした施設で、地域の名産品を扱う直売所のほか、浪江町の工芸品「大堀相馬焼」(おおぼりそうまやき)や地酒 「磐城壽」(いわきことぶき)を販売するコーナーも。
「なみえ焼そば」や、「請戸もの」と呼ばれる請戸の海でとれたお魚などが名物です。
参加者の一人が手に取ったのは、松川浦産の「あおさ」。「お味噌汁に入れたり、いろいろアレンジできそう!」と、うれしそう。お土産を選ぶひとときも、旅の醍醐味ですね。
■道の駅なみえ
所在地:福島県浪江町大字幾世橋字知命寺60
営業時間:10:00〜18:00
定休日:毎月最終水曜
※「なみえの技・なりわい館」大堀相馬焼コーナーのみ毎週水曜
【相馬市/遊学の宿 いさみや】名物「松川浦の浜焼き」体験と夕食&宿泊

この日の宿は、松川浦沿いにある「遊学の宿 いさみや」。夕食は、併設の浜焼き小屋で、名物の「浜焼き」を体験しながらいただきます。
松川浦の浜焼きといえば、お頭付きの魚を丸ごと串に刺して豪快に焼き上げるスタイル。意外とコツが必要で、魚やイカをカーブさせながら串を刺すのにみんなひと苦労!

宿がある松川浦は、相馬市にある福島県唯一の潟湖(せきこ/外海と切り離されてできた湖のこと)。震災の津波で大きな被害を受けましたが、地元の若旦那たちが立ち上がり、「松川浦ガイドの会」を結成。途絶えていた浜焼きを復活させました。
今では笹浸し漁や磯ガニ釣りなど、ここでしか味わえない体験を通じて、松川浦の魅力を伝えています。この日もガイドの会のみなさんの元気なレクチャーで、浜焼き小屋は笑い声に包まれていました。

食卓には、カレイやイカ、ホタテ、とうもろこし、秘伝のタレを使った焼きおにぎりに新鮮なお刺身まで、豪華な食材がずらり。
自分で焼いて食べる魚は、格別のおいしさ! はじめて串焼きに挑戦した小学生の女の子は、「漫画みたいな焼き方でワクワクした! 皮までパリパリでおいしいです!」と目を輝かせていました。
お腹も心も大満足の夕食になりました。
■遊学の宿 いさみや
所在地:福島県相馬市尾浜字平前109
営業時間:チェックイン15:00/チェックアウト10:00
料金:浜焼き体験付き宿泊プラン(1泊2食付き):中学生以上16,500円~、小学生11,000円~
【2日目】磯ガニ釣り&鹿狼山の温泉へ
モニターツアー2日目は、相馬市で震災について学び、海辺で磯ガニ釣りを体験。新地町の温泉で旅の疲れを癒やしました。
【相馬市/相馬市伝承鎮魂祈念館】震災前の相馬市の原風景を知る

2日目の朝、笹浸し漁を見学したあとは「相馬市伝承鎮魂祈念館」へ。ここは震災で亡くなられた方々を追悼し、津波で被災した尾浜・原釜、磯部地区のかつての暮らしを後世に伝える施設です。
館内には震災前のまち並みの写真や、あの日を記録した映像が展示されていました。
映像には、昨晩宿泊した宿の周辺が被害を受けた様子も映し出され、復興までの道のりをあらためて実感します。スクリーンを見つめる参加者の表情は真剣そのものでした。
■相馬市伝承鎮魂祈念館
所在地:福島県相馬市原釜字大津270(笠岩公園内)
開館時間:9:00~17:00
休館日:年末年始(12月29日~1月3日)
【相馬市/松川浦】親子で夢中!磯ガニ釣り体験

続いては、祈念館のすぐそばにある人工磯で「磯ガニ釣り」に挑戦! 針金の先にイカゲソを巻き付け、岩のすき間にそっと垂らして狙います。
ガイドのみなさんに「ここにカニがいそうだよ」と教えてもらいながら待つ時間はドキドキ。餌に食いついても、引き上げる瞬間にスルッと逃げられてしまい、子供も大人も声を上げながら夢中になっていました。

磯にはカニのほかにも小魚や貝、ウミウシなどがいて、海の生きものの豊かさにびっくり。ガイドさんがカニの種類や生態を教えてくれて、遊びながら学びもいっぱいのひとときになりました。
■磯ガニ釣り体験
体験場所:福島県相馬市原釜大津 灯台トイレ前
料金:1人1,500円(体験・ガイド・餌付き)
備考:体験プランは予約制、1週間前まで受付
【新地町/鹿狼の湯】手が長い神様の伝説が残る「鹿狼山」麓の温泉へ
「浜の駅松川浦」で買い物ショッピングを楽しみ、「ホテルみなとや」で海鮮ランチを堪能したあとは、新地町の鹿狼山エリアへ。

シカとオオカミを連れた、手の長い神様・手長明神(てながみょうじん)が住んでいた——そんな伝説が残る鹿狼山は、海を眺めながら登れる山として人気で、元日には山頂で初日の出を拝もうと毎年約2,000人もの登山者が集まります。
■鹿狼山
所在地: 福島県相馬郡新地町、宮城県伊具郡丸森町

そして旅のラストは、鹿狼山の麓に湧く「鹿狼の湯」へ。
1875年創業の湯治(とうじ)宿をルーツに持つ歴史ある温泉で、さらりとした鉱泉のお湯に浸かれば、2日間の疲れもじんわりほぐれていきます。
心も体もすっきりリセットして、名残惜しくも帰路につきました。
■鹿狼の湯
所在地: 福島県相馬郡新地町杉目飯樋50
営業時間:11:00~19:00(最終受付18:30)
定休日:隔週火曜
料金:中学生以上770円、小学生440円、未就学児220円

震災からの復興の歩みを実際に目にし、人々の温かさや地域の誇りを肌で感じ、豊かな食や自然にふれた時間は、とても濃く、あっという間。
訪れる前に抱いていたイメージとは違う発見がいくつもあり、「もっと知りたい」「また来たい」という気持ちが自然と湧いてくる旅となりました。
着実に復興しながら、今なお進化を続ける相双地域。次のおでかけ先として候補に加えてみてはいかがでしょうか。
記事を書いた人
宇都宮薫
多摩美術大学卒業。編プロ勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。雑誌・ウェブメディアなどへの執筆のほか、書籍(ビジネス書・実用書・コミックエッセイ等)の編集・構成を手掛ける。得意ジャンルは生活情報全般、出産育児、健康、おでかけ、グルメなど。趣味は地図を見ること、まち歩き、絵を描くこと♪
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