自分で糸を染めて機織り機で織る!<br/>黄八丈づくり体験【イベントレポ】
更新日2023年10月05日/公開日2023年02月13日

自分で糸を染めて機織り機で織る!
黄八丈づくり体験【イベントレポ】

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「いこーよとりっぷ」の姉妹サイト「未来へいこーよ」では現在、黄八丈(八丈島)や革細工(墨田区)や江戸切子(江東区)といった「東京のものづくり」をテーマにした子供向け職業体験プログラムを開発しています。

今回は、東京都の離島・八丈島で黄八丈(きはちじょう)職人さんに弟子入り! 木の皮をはいで煮詰めて作った染料で布を染める体験と、自分で染めた糸を使って機織り機で黄八丈を織る体験の2本立てです。

八丈島の自然にあるものを使って織りあげる黄八丈の美しさと価値がわかる体験の模様をレポートします。

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黄八丈の職人さんから染色と機織りを学ぶ

黄八丈伝統工芸士の山下さん(写真右)に黄八丈の魅力について教えてもらいます
黄八丈伝統工芸士の山下さん(写真右)に黄八丈の魅力について教えてもらいます

イベントの講師を務めるのは、東京都黄八丈伝統工芸士の山下巧(やましたたくみ)さん。

黄八丈は八丈島で自生する草木から作った黄・樺(かば)・黒の3色を主体にし、機織り機で独特の模様を織り込んで作られます。

参加者たちは、山下さんが経営する「八丈民芸やました」で、着物をはじめ財布やカバン、名刺入れなどさまざまな黄八丈製品を見ながら、黄八丈がどんな風に作られているかを教わりました。

【染色体験:ステップ1】木の皮をはいで染料を作る

伐採した椎(しい)の木を乾燥させたものが黒色の染料になります
伐採した椎(しい)の木を乾燥させたものが黒色の染料になります

黄八丈の制作工程は大きく分けて「染色」と「織り」があります。まずは「染色」の体験からスタート。

黄八丈の黄色は八丈刈安(はちじょうかりやす/別名:コブナ草)、樺色はマダミ(タブの木)の樹皮、黒色は椎の木の樹皮を煮詰めて作ります。今回は黒色の椎の木を使って染色液を作ります。

専用の工具を使って皮をはぎとります
専用の工具を使って皮をはぎとります

椎の木の皮は固く、手ではぎとるのは難しいため、刃がゆるやかにカーブした専用の鎌を使います。鎌の先を木と皮の隙間に入れ、ハンマーで鎌の背をたたくと刃がカーブに沿って入り込んでいき、きれいにはがすことができます。

参加者も挑戦
参加者も挑戦

参加者のみなさんにとって、木の皮をはぐのは初めての体験。職人さんが使っている道具をお借りして挑戦してみました。

最初は少しだけしか取ることができなかったものの、コツを教えてもらって慣れていき、自分一人で大きな皮がとれたときには思わず「やったー!」と大喜びする場面も。

自慢の1枚皮を手に山下さんと参加者の子供たちで記念撮影
自慢の1枚皮を手に山下さんと参加者の子供たちで記念撮影

まだまだ黄八丈づくりの第一歩ですが、大人と一緒にコツを学びながら上達できたことで、すでに大きな達成感がありました。

【染色体験:ステップ2】木を煮詰めて染色液を作る

大きな鍋で木の皮を煮ていくのも貴重な体験
大きな鍋で木の皮を煮ていくのも貴重な体験

次に、集めた木の皮を山下さんが作った専用の釜に入れて煮詰めていきます。

山下さんによると「先ほど皮をはいだ木を薪に使っています。薪を燃やした灰は灰汁としてまた使うので無駄がないんです」とのこと。黄八丈が八丈島の素材を捨てるところなく使って作られていることを身を持って知れた工程です。

ときどき鍋の中をかき混ぜて色を確認していきます
ときどき鍋の中をかき混ぜて色を確認していきます

かまどには、手前と奥にひとつずつ釜があります。ひとつのかまどで2つの釜が煮られるようになっている点も、山下さんならではの工夫のひとつです。

【染色体験:ステップ3】模様をイメージしながらタオルをしぼる

布に輪ゴムをつけて模様を作っていきます
布に輪ゴムをつけて模様を作っていきます

次は染色で使う絹の布を選び、好きなところに輪ゴムで縛っていきます。輪ゴムで縛ったところは染色液が入りにくいので、その部分だけ色が抜けて模様になる仕組みです。

輪ゴムをたくさん使ったり、大きな輪にしたりとオリジナリティが出せます
輪ゴムをたくさん使ったり、大きな輪にしたりとオリジナリティが出せます

輪ゴムをどれだけ使うか、どの大きさでしばるのか、縛る強さはどのくらいかでも模様のでき方は違ってきます。

どんな模様ができるか「完成予想図」を描いてもらいました
どんな模様ができるか「完成予想図」を描いてもらいました

参加者の頭の中にある「完成予想図」を、テーマとともに紙に描いてもらいました。丸の形以外にも四角や帯状などもあり、模様もさまざまです。

【染色体験:ステップ4】染色液に漬け込んで色を染める

染色液が入った鍋に布を浸して、しばらく置きます
染色液が入った鍋に布を浸して、しばらく置きます

輪ゴムで模様を作った布を染色液に入れて、色を染み込ませます。

椎の木を煮詰めた黒色の染色液と、八丈刈安で作った黄色の染色液が用意されており、どちらか好きな色を選べました。

ゴム手袋をしてしっかり絞ります
ゴム手袋をしてしっかり絞ります

しばらく浸したら、媒染剤(ばいせんざい/繊維に染料を定着させる液のこと)をつけて色を発色(定着)させます。布が染まっていることを確認したら、ゴム手袋をして布を絞ります。

輪ゴムをはずして模様をチェック!

輪ゴムをはずして模様を確認できたときは至福の時間!
輪ゴムをはずして模様を確認できたときは至福の時間!

続いて、布についている輪ゴムをはずしていきます。狙い通りに模様がついていることに、大人も子供も感動したようで「(模様が)ついてる! きれい!」など、大きな声で喜んでいました。

丸やひし形、波線などたくさんの模様を入れました
丸やひし形、波線などたくさんの模様を入れました

想像したとおりに模様ができたところや、想像とは異なる模様ができたところは、それぞれ「どうしてそうなったのか?」を考えて振り返りながら染めたため、学びの多い体験になりました。

また、布が濡れているときよりも乾いてくると色が薄くなっていることにも気づいた参加者たち。

山下さんより「本物の黄八丈の色にするには、これをあと数十回繰り返すんですよ」というお話を聞いて、黄八丈の色がどれだけの苦労の上にできているかを参加者一同が実感しました。

【染色体験:番外編】好きな素材を使って自分で糸を染める

オンライン上でレクチャーを受けながらオリジナルの素材で糸を染めます
オンライン上でレクチャーを受けながらオリジナルの素材で糸を染めます

八丈島でのイベント開催からさかのぼること2週間前、参加者の自宅に「染色キット」が届きました。

キットを用いて作るのは、八丈島での機織り体験で使う「横糸」。八丈島でのプログラム体験の前に、自分の好きな素材で横糸を染める“事前体験”もセットになっています。

「万願寺唐辛子」で染めると…

色の濃さが違う煮汁を作って染め比べています
色の濃さが違う煮汁を作って染め比べています

草や木などの植物であれば、どんなもので染めてもOKということなので、参加者のひとりは「万願寺唐辛子」を選びました。

緑の青々とした葉から緑色に染まるかと予想しましたが、どちらかというと黄緑に近い色に染まっていました。

タマネギの皮で染めると…

家庭用のガスコンロと鍋などを使って気軽に染色体験ができます
家庭用のガスコンロと鍋などを使って気軽に染色体験ができます

もう一組の参加者は、タマネギの皮を使って染色液を作りました。色の濃さをあえて変えることで、濃淡の違う糸を作り出しました。

タマネギで染めた糸。身近な素材を使ってもきれいに色が染まります
タマネギで染めた糸。身近な素材を使ってもきれいに色が染まります

「染色キット」に入っている媒染剤を水に溶かし、その中に染料がついた糸を入れると、より発色がよくなります。

自分で染めた横糸を使っていよいよ機織り体験に挑戦します。

【機織り体験:ステップ1】横糸を機織り機に使える状態にする

山下さんが長年使ってきた木製の糸車に糸を巻いていきます
山下さんが長年使ってきた木製の糸車に糸を巻いていきます

持ち込んだ横糸を機織り機で使えるようにするために、まずは糸枠に糸を巻きます。

糸車を使ってボビンに糸を巻いていくのも貴重な体験です
糸車を使ってボビンに糸を巻いていくのも貴重な体験です

糸枠にセットした糸を糸車に通し、取っ手がついた円形の板(歯車)を回すとボビンに糸が巻き付いていきます。

(左)糸を巻きつけたボビン/(右)木製の船の形をした「シャトル」と呼ばれる道具
(左)糸を巻きつけたボビン/(右)木製の船の形をした「シャトル」と呼ばれる道具

事前体験で用意してきたすべての糸をシャトルに通して準備が完了。いよいよ機織り機で黄八丈を織ります。

【機織り体験:ステップ2】機織り機で自分だけの黄八丈を織る

山下さんが丁寧に機織り機の使い方をレクチャーします
山下さんが丁寧に機織り機の使い方をレクチャーします

「八丈民芸やました」にある機織り機は、明治時代から今なお現役で使われているものです。山下さんから使い方や織り方を直々に教えていただきます。

機織り機には500本もの縦糸が入っています。写真で右手に持っているのが筬(おさ)です
機織り機には500本もの縦糸が入っています。写真で右手に持っているのが筬(おさ)です


機織り機の足元にあるペダルを踏むと縦糸の位置が変わります。そこにシャトルで横糸を通したあとに、筬を手前に引いて横糸の位置をトントンとそろえる。その後、縦糸の位置を足元のバーで踏みかえて横糸を通し、再び筬でトントンとそろえる。

この手順を繰り返していくことで、布ができてきます。

足元のペダルは4つあり、そのうち2本を踏むことで模様を作っていける仕組みです
足元のペダルは4つあり、そのうち2本を踏むことで模様を作っていける仕組みです

シャトルが通っていく「カラカラ」という音と、筬で糸をそろえる「トントン」という音が交互に店内に響き、まるで音楽を奏でているかのような時間が過ぎていきます。

初めての機織体験ではありますが、参加者は工房で働いている人の気分にひたれました。

大人よりも子供のほうが早くコツをつかんでいました
大人よりも子供のほうが早くコツをつかんでいました

黄八丈の機織りの場合、もしペダルの踏み方を間違えてしまっても、間違えたところまで戻って修正ができます。

そのため「黄八丈には“模様の失敗”はありません」と山下さん。黄八丈の高い品質が保たれている秘密がこんなところにもありました。

ピンクやパステルカラーの糸を使い、従来の黄八丈にはない色合いも出せます
ピンクやパステルカラーの糸を使い、従来の黄八丈にはない色合いも出せます

途中で横糸を変えると、自分だけの色の組み合わせを作ることができます。試行錯誤しながら糸を選んで織り上げたことで、黄八丈に対する思い入れも深まります。

山下さんの手によって完成した名刺入れ。本物の商品と同じクオリティに仕上げていただいています
山下さんの手によって完成した名刺入れ。本物の商品と同じクオリティに仕上げていただいています

完成した布は、山下さんの手によって名刺入れに加工して後日郵送で届けられます。

自分が織った黄八丈が、実際に販売されている商品のようになって送られてくるのも、大きな感動があったようです。

このイベントは2023年夏の本格稼働に向けて、現在鋭意ブラッシュアップ中です。大人も子供も楽しくて学びのあるイベントにしていきますので、開催時はぜひご参加ください。

記事を書いた人

いこーよとりっぷ編集部

「いこーよとりっぷ」では、地域の伝統行事や季節毎のイベント情報など、地域の魅力を発信し、親子にとって「10年先も思い出す」おでかけ体験を提供していきます。

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