逗子「小坪漁港」で海のお仕事体験<br/>伝統的な「刺し網漁」に挑戦!
更新日2022年04月13日/公開日2021年12月03日

逗子「小坪漁港」で海のお仕事体験
伝統的な「刺し網漁」に挑戦!

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神奈川県逗子市

神奈川県逗子市の「小坪漁港」で、2021年11月6日(土)、「漁師のお仕事をしよう!~刺し網漁に挑戦~」が開催されました。

当日は、総勢10人の子供たちが漁船に乗って刺し網漁に挑戦。「漁師」という仕事への理解を深め、海を取り巻く環境の変化や働く楽しさを体感しました。その貴重なイベントの様子を取材し、くわしくレポートします。

「小坪漁港」の魅力を紹介!

先生は「小坪漁港」の現役漁師さん

今回イベントの舞台となった「小坪漁港」は、JR横須賀線「逗子駅」から「鎌倉駅」行きのバスで約20分。住宅街や、逗子市を代表するマリンリゾート「リビエラ逗子マリーナ」からもほど近く、市民の暮らしに密着した漁港です。

漁業は逗子市唯一の地場産業として長い歴史を持ち、同漁港も鎌倉時代には開港していたといわれています。

近年ではその伝統や魅力をより広く伝えるために、さまざまな取り組みを実施。本イベントも、次世代を担う子供たちに、海や漁港への関心を高めてもらうための企画です。講師として、小坪漁港漁業協同組合の漁師さんたちが登場しました。

イベントのスケジュール

  1. 9:00 集合、受付・検温、準備
  2. 9:10 朝礼(あいさつ・働く心構え・本日のミッション発表)
  3. 9:25 講義(小坪漁港・刺し網漁法・逗子でとれる魚について)
  4. 9:50 乗船準備(ライフジャケット着用・記念撮影)
  5. 10:00 出港~乗船体験(仕掛け回収を見学・仕分けなど)
  6. 11:00 帰港~下船(ライフジャケット返却)、とれた魚をチェック
  7. 11:20 ロープワーク講座
  8. 11:40 報告書(レポート)作成
  9. 12:10 修了式、“お給料”の支給
  10. 12:20 お買い物、とれた魚を分配
  11. 12:30 解散

受付&検温をしたら着替えてスタンバイ!

朝9時。同漁業協同組合の事務所前に、全10組の小学生親子が続々と集まってきました。眠たそうに目をこすっている子、ワクワクした笑顔の子、緊張した面持ちの子など、表情はさまざま。それぞれ受付と検温を済ませたら、ビブスを着用してスタンバイします。

全員集合!プロとして働く意識を高めよう

ここからは、保護者と離れて子供たちだけのカリキュラムが進行。

イベントに参加する子供が全員そろったら、「おはようございます」と元気にあいさつをして朝礼が始まります。その主な目的は、「今から仕事をする」という意識を高めること。ファシリテーターが、仕事をする上での約束ごとを子供たちにしっかりと伝えます。

プロとして守りたい3つのこと

  1. 元気よくあいさつをしよう!
  2. 漁師さんたちの話をよく聞こう!
  3. わからないことは質問しよう!

働く心構えができたところで、本日のメイン講師が登場。同漁業協同組合長を務める大竹清司さんです。

「小坪漁港」と「刺し網漁」について学ぼう!

漁業組合の事務所に場所を移し、講義がスタート。まず初めに子供たちのミッションが発表されました。その内容とは「刺し網漁の漁船に乗って漁師さんを手伝い、逗子市内の店舗へ卸す魚を確保すること」。

「今日は2隻の船に分かれて乗ってもらいます。片方の船に乗っている2人の漁師さんのうち、1人はまだ勉強中の見習いです。もう一隻には私ともう1人ベテランが乗りますが、そろそろ現役引退という年齢で腰が痛い。だから皆さん、引っかかった海藻を網からはずしたり、とれた魚を仕分けしたりして、漁師さんたちを手伝ってください」(大竹さん)

刺し網漁とは、魚の通り道に帯状の網を垂直に仕掛けて漁獲する、伝統的な漁法のこと。通常は夜のうちに網を仕掛けて早朝に引き上げますが、今日は少し長めに仕掛けられた状態です。

魚が網に刺さったり絡まったりするため身のやわらかい魚には不向きで、ヒラメ、カワハギ、メバル、カサゴ、ホウボウといった身がしっかりした魚をとるのに向いています。

刺し網漁では、身がしっかりした魚のほかサザエやイセエビがとれることも
刺し網漁では、身がしっかりした魚のほかサザエやイセエビがとれることも

「ヒラメがとれたらラッキーですね。あと、今やタイやヒラメより高級魚のカワハギ。養殖していないのと、季節的にキモがおいしいので、この時期は高く売れます。以前はとれなかったエイも最近とれるようになってきました。エイのキモも、レバーに似た味わいで脂がのっておいしいんですよ。ホウボウは鍋物に入れると最高です」(大竹さん)

これはぜひ、おいしい高級魚を狙いたいところ。

約25分間の講義が終わり、子供たちのグループと保護者のグループは、船が待つ漁港へと向かいます。事務所を出て坂道を下り始めると、すぐにキラキラと光る海が見えてきました。

さぁ、張り切って漁へ出発しましょう!

ライフジャケットを着用して乗船の準備

漁港に到着しました。全員おそろいのキャップをかぶり、安全のためライフジャケットを着用します。

乗船する前に、みんなで記念撮影。頑張るぞ、おー!

子供たちを待っていたのは、「第五かず丸」と「傳兵衛たつ丸」という2隻の漁船。足元に注意しながら、1人ずつゆっくり乗り込んでいきます。船が傾かないよう船体の左右に分かれて座り、スタンバイしたらいよいよ出港です!

いざ大海原へ!初めての刺し網漁にみんな緊張気味!?

真っ青な空と気持ちいい潮風。波は穏やかで、静けさのなかに漁船のエンジン音だけが響きます。白い帆を掲げたヨットとすれ違うのも、マリンスポーツのメッカである逗子の海ならでは。なんとなく……今日は大漁の予感! 

刺し網の両端には目印となるオレンジ色の旗がついているので、それを目指して船は進みます。

1カ所目のポイントに到着。旗を引き上げ、昨晩仕掛けた網を回収します。

テンポよく網をたぐっていく漁師さん。簡単そうに見えますが、網自体がとても重いので、実はかなりの重労働です。

こちらは「第五かず丸」に乗船した子供たち。高学年が中心です。

「船が動いているうちは、座っていてくださいね」という大竹さんの教えを守り、静かに座っています。少し緊張してるのかな? 

一方、低学年がほとんどの「傳兵衛たつ丸」チームは、多くの子が最初からリラックスした表情。ニコニコと楽しそうに漁師さんの作業を見学したり、漁について質問したりしていました。

とれた魚を仕分けしよう!

網にかかった魚が徐々に姿を現し始めました。魚が水揚げされるたび、子供たちの歓声が海に響き渡ります。

「これはシビレエイっていいます。さわるとビリビリっとするよ。触ってみる?」と漁師さん。

数人の子が、おそるおそる指先でツンツンと触れてみます。ゴム手袋をしているので、電気ショックを感じることはなく、ホッとしたような笑顔を見せていました。

その後も、マダイ、カサゴ、カニ、ホウボウ、エビ、コショウダイなど、さまざまな魚介が続々と網にかかり、子供たちは大興奮! 漁の大切な道具である刺し網と、魚の身を傷つけないよう、漁師さんが丁寧に網をはずしながら「小さな子供の魚がかかったときは、大きく育ってくれるように海に戻すんだよ」と話してくれました。

ときには、沖縄県で見られるような南方系の魚が網にかかることも。その美しさに見とれていたところ「海の温度が高くて、生態系がくずれてきたんだよ」と漁師さんがぽつり。地球温暖化が私たちの食卓に与える影響を、現実として感じた瞬間でした。

トゲや毒といった危険性のない魚がかかったときは、子供たちが仕分けを担当。漁師さんから魚を受け取り、水を張ったバケツへ放します。元気がなくなってしまった魚は氷の入ったクーラーボックスへ、小さな魚がとれたときは「大きくなれよ~!」と声をかけながら海に放流。漁師さんのアシスタントとして大活躍です。

初めのうちは、活きのいい魚に触れるのが怖くて手を出せずにいた子も、次第に慣れてテキパキと手伝えるようになりました。

緊張が解けてきたのか、乗船したときとは見違えるほど、笑顔や会話が増えてきた子供たち。お仕事の合間にもう1隻の漁船を見つけて互いに手を振り合ったり、とれた魚たちを観察したりと、とても楽しそうでした。

漁船から降りて、とれた魚をチェック!

2隻の船はそれぞれ3カ所に仕掛けた網をすべて回収し、無事に帰港しました。「ありがとうございました!」と漁師さんたちにお礼を伝え、子供たちは事務所に戻ります。

組合事務所の前で、漁師さんに教わりながら魚の名前や見た目の特徴などを確認。互いの船でとれた魚介を見て、「この魚、何ていうの?」「大きなエビがいる!」と盛り上がります。

「このあと、レポートに魚の絵を描いてもらうので、ちゃんと覚えておこうね!」というファシリテーターの言葉を聞き、どの子も魚の姿をしっかりと目に焼き付けていました。

漁師さん直伝!ロープワーク講座

レポート作成の前に、大竹さんがロープワークを教えてくれました。漁師さんにとってロープは必要不可欠な道具。船と陸をつなぐなど、用途に応じてさまざまな結び方があります。

「1~2年生なら1種類、3~4年生なら2種類以上、結び方を覚えられるといいですね。キャンプや日常生活にも使えて便利なので、お父さんお母さんにも教えてあげてください」(大竹さん)

今回は、基本的な結び方である「本結び」と「巻き結び」に挑戦。「輪っかを2つ作って、こうしてああして…」と、大竹さんが2~3秒でささっと結ぶ様子は、まるで手品のようです。大竹さんから手順を教わりながら、繰り返し練習する子供たちの姿がとても印象的でした。

お仕事体験について報告書(レポート)を作成

事務所内に戻り、お仕事体験の締めくくりとして今日体験したことや学んだことをレポートにまとめます。

描きたい魚の様子を観察するため、もう一度外へ出ていく子もチラホラ。魚の感触や見た目を思い出しながら、イラストと文章にまとめることで、今日のできごとがより鮮かな記憶として刻まれます。

“お給料”を使ってショッピングを楽しむ時間も

これにて本日のお仕事体験は終了。
「今日はみんなのおかげで、たくさん魚がとれました。本当にご苦労さまでした」(大竹さん)

頑張った子供たち1人1人に、大竹さんから“お給料”が手渡されます。

封筒を受け取ったら、さっそく中身をチェック。入っていたのは、「小坪漁港」で使える1,000円分の金券です。

金券を使って、お土産をショッピングするのも楽しいひととき。多くの子供が、小坪名物の新鮮なシラスやサザエを購入していました。

とれたての新鮮な魚をお土産に!

いよいよお待ちかねの時間。とれた魚をみんなで仲良く分け合います。「◯◯がほしい人!」というスタッフの声とともに、「はーい!」と元気よく手を挙げます。人気の魚はジャンケンによる争奪戦です。

お目当ての魚を手に入れて、みんなとってもうれしそうな笑顔。

ホウボウをゲットした子も。今日は大竹さんおすすめの鍋料理で決まり!
ホウボウをゲットした子も。今日は大竹さんおすすめの鍋料理で決まり!

魚に触れることにもすっかり慣れ、ダイナミックに素手で受け取って自前のクーラーボックスに移していました。きっと今夜の食卓には、どの家庭でも魚のごちそうが並ぶはず♪ 親子の会話も弾みそうですね。

参加者の感想をご紹介!

体験したことのなかで、印象に残ったのは?家族や先生、お友だちに話したいのはどんなこと?子供たちがレポートに書いた答えのなかから、一部を抜粋してご紹介します。

「楽しかったことは、たくさん魚がとれたこと! 漁業がおもしろいこと!!!」

「魚が減っている、増えている魚もいる。海の環境が壊れていること」

「カニが泳いでいるのを初めて見た!」

「魚釣りはよくするけど、網でとるのは初めて。いっぱいとれてよかった!」

「魚の種類や、カニの種類を、みんなに話したいです」

「海には魚などの生き物がたくさんいるから、ゴミを捨てないようにしようと思った」

「縄の結び方はキャンプや旅行のときに役立ちそうなので、教えてもらえてよかった。魚の名前を覚えて、魚をさわれてすごく楽しかった」

「漁師さんは、朝2時ぐらいに起きて3時に出港するということ。すごいと思った!」


「刺し網漁」を体験することで、海で働くことの厳しさや楽しさを肌で感じた子供たち。海の生き物や自然環境の変化ついても感心を持つきっかけになったようです。

同漁港では、漁師のお仕事体験イベントを今後も不定期に開催する予定です。そのほか、釣り船での釣り体験やワカメの収穫体験なども行っています。「いこーよとりっぷ」や、姉妹サイトの「いこーよ」でも紹介していきますので、ぜひ注目してくださいね。

記事を書いた人

雨宮あかり

「いこーよとりっぷ」エディター/食べること・飲むこと・音楽が大好きなママ編集者。世界中の音楽フェスを体験すること&ベルギービールの醸造所めぐりが夢です♪ 特技はアロマセラピートリートメントです。

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