夏を告げるすり胡麻の香り。
川島町で「すったて」を食べる
日に日に日差しが強くなってきた2021年5月。体が涼を求めるお昼時、のど越しさわやかな冷やし麺が無性に恋しくなってきました。
地元のうどん屋もいいけど、できれば新しい味に出会いたい…と調べたところ、「すったて」という聞き慣れない響きの郷土料理を発見! 胡麻や薬味をすり鉢ですり、氷を入れたつけ汁で食べる冷製うどんで、夏バテ予防にも最適だとか。うーん、これは食べてみたい!
さっそく「いこーよとりっぷ」のスタッフ2人を誘い、車で埼玉県中部の川島町(かわじままち)へ。地元で人気の「そうま水産 川島店」で、すったてを食べてきました。
食べる前から楽しめるつけ汁の作り方から、町民のソウルフードとして愛されてきた背景まで、“する”ほどに郷土の香り漂うすったての魅力をお届けします。
川島町の夏の風物詩「すったて」とは?
「小江戸」の呼び名で知られる埼玉県の川越市街から、車を走らせること約15分。川島町には、のどかな田園風景が広がります。
四方を川に囲まれた川島町は、度重なる川の氾濫で平坦な地形と肥沃な土壌に恵まれ、昔から稲作が盛んな町。裏作として小麦の栽培も広く行われ、「うどん文化」が育まれてきた地域でもあります。
そんな川島町で、夏の農作業の合間においしく食べられる料理として受け継がれてきたのが「すったて」です。郷土料理だけにさまざまなバリエーションがありますが、ひとことで言うと「胡麻&味噌ベースの冷たいつけ汁で食べる冷製うどん」。
材料をすり鉢ですり合わせてつけ汁を作るため、「すりたて」を意味する「すったて」と呼ばれるようになったのだとか。
夏の炎天下でも重労働を行っていた農家にとって、手間をかけずに栄養がとれる料理は必要不可欠でした。
地産の金胡麻や夏野菜、自家製の味噌といった身近な材料でさっと作れるすったては、たんぱく質やビタミン、ミネラル類など栄養バランスも抜群! 食欲が落ちていてものどごし良くつるっと食べられるため、どの家庭でも重宝されました。
家庭ごとにオリジナルレシピが存在
もともと農家の家庭料理として発展してきたため、各家庭に伝わる独自のレシピがあるのも興味深いところ。ツナ缶や梅酢を加えたり、砂糖を入れたりと、さまざまな味が楽しまれてきました。
現在では町内10軒以上の飲食店がすったてを提供。ご飯に豚肉ときゅうりをのせた「スタミナすったて丼」(写真)や、漬物にアレンジした「すったて漬け」など、多彩に進化しています。
「そうま水産 川島店」ですったてを体験!
真夏日となったこの日、ぜひすったてを食べてみたいと訪れたのが、写真の「そうま水産 川島店」です。2010年の「第6回埼玉B級ご当地グルメ王決定戦」にすったてを出品し、見事グランプリを獲得したお店だそうで、入店前から期待に胸が高まります。
すったてだけでなく、沼津漁港から取り寄せた鮮魚が味わえるボリュームたっぷりのメニューも大人気。ご飯と味噌汁、漬物が食べ放題なので、食べざかりの子供連れにもうれしいお店です。この日もランチを楽しむ地元の人たちでにぎわっていました。
すったり叩いたり!食べるまでのプロセスが楽しい!
うどんを楽しんだあとの汁に新鮮な刺身とご飯を足して味わう「すったて漁師めし」(1,408円)も人気と聞いて迷いましたが、今回はすったてのピュアな魅力を味わうべく、「すったて」を単品で注文。
最初に、片口に入った出汁、胡麻が入ったすり鉢とすりこぎ、そして、玉ねぎ・味噌・きゅうりの3点盛りが運ばれてきました。
氷と薬味(大葉、茗荷など)をのせたうどんは、5分ほど遅れて到着。実はこれ、「つけ汁を作り終わる頃にタイミング良く食べ始められるように」という、お店側の配慮だったんです。うどんが到着してからそのことに気づいた私たち…。気を取り直し、さっそくつけ汁作りをスタート!
STEP1:胡麻をすります
まずはすり鉢で胡麻をすりつぶします。普段は簡単便利なパック入りのすり胡麻を使っている私ですが、すりたての香りはやっぱり違う♡ こうばしい香りとともに、子供の頃、母の手伝いで胡麻をすった思い出がよみがえりました。
STEP2:玉ねぎを加えて、さらにすりすり♪
胡麻をすり続けること数分。粒感がなくなったら玉ねぎを加えてさらにすりつぶします。この作業、小さな子供でもママやパパと一緒に楽しく取り組めそう!
STEP3:味噌ときゅうりを加えて軽く叩く
続いてきゅうりを投入。叩きながら混ぜていきます。
「えいっ(トントントン)!」「どうだっ(トントントン)!」と、心のなかでかけ声をかけながら叩いていると、次第に無心になり…。叩き終わった頃には気分がすっきり(笑)。
きゅうりは、好みに合わせて潰し具合を調節してOK。個人的には、潰しすぎず、シャキシャキ感を残したほうがおいしい気がしました。
STEP4:出汁を加え胡麻&味噌を溶かす
ペースト状になった胡麻と味噌に、出汁を加えて混ぜ溶かします。同店では出汁を使いますが、昔は冷たい水(井戸水など)を用い、野菜の旨みで食べるのが主流だったそうです。
最後に、うどんに添えられた氷を入れて冷やし、薬味を加えれば完成!
気になる「すったて」のお味は?
でき上がった汁にうどんをつけ、まずはつるつるっとひと口。とたんに胡麻と出汁の豊かな風味が口いっぱいに広がります。
出汁はさっぱりとしているのにコクがあり、味噌仕立てのほどよい塩気が汗をかいた体にスーッと染み渡る感じ。夏野菜のシャキシャキ感とうどんのモチモチ感も絶妙です。氷の冷たさや、すり胡麻と薬味の香りに五感も大満足♪
つけ汁を作る工程は、どことなく習字の前にすずりで墨をするのに似ていて、おいしいものと向き合うための儀式にも感じられ、思いのほか心が落ち着く時間でした。
今回は、料理の撮影もあり、うどんの到着を待ってつけ汁を作りましたが、それでもすっかりすったての虜になった私たち。「家でも作ってみたい!」「トッピングを考えるのも楽しそうだよね」などとおしゃべりしつつ、お店を後にしました。
食事のあとは、「平成の森公園」でバラのトンネルを観賞したり、「金笛しょうゆパーク」で買い物をしたりと町内の観光を満喫。車の窓から見えるのどかな田園風景に癒やされた川島町の旅でした。
すったてがお店で食べられるのは、5月から9月頃まで。ぜひ足を運んでみてくださいね!
※2021年7月現在の情報です。販売時期やメニューが変更になる場合もあるため、来店前に直接店舗に確認することをおすすめします。
記事を書いた人
雨宮あかり
「いこーよとりっぷ」エディター/食べること・飲むこと・音楽が大好きなママ編集者。世界中の音楽フェスを体験すること&ベルギービールの醸造所めぐりが夢です♪ 特技はアロマセラピートリートメントです。
スポット基本情報
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スポット名 | そうま水産 川島店 |
ふりがな | そうますいさん かわじまてん |
住所 | 埼玉県比企郡川島町川島町表433-1 |
電話番号 | 049-297-0276 |
営業時間 | 平日11:00~15:30 (LO15:00)/17:00~21:00(LO20:30) 土日祝11:00~21:00 (LO20:30) |
定休日 | 年中無休 |
料金 | 680円~(メニューにより異なる) |
アクセス | JR桶川駅から車で約20分、圏央道「川島IC」から車で約10分 |
駐車場 | 駐車場あり |