
【東京】江戸っ子に愛された五大桜とは?現在の見どころや見頃も紹介
いよいよ待ちに待った桜のシーズン。どこでお花見をしようかとワクワクしているママパパのために、今回は東京都内にある「江戸の庶民に愛された五大桜の名所」をご紹介します。
浮世絵(錦絵)にも描かれた江戸時代の花見の様子や、現在の見どころ、アクセス、例年の見頃をまとめました。親子でおでかけして、江戸っ子になった気分でお花見を満喫してくださいね!
※内容は一部変更または中止になる可能性があります。最新情報および詳細は、公式サイトをご確認ください
日本人に愛されてきた桜と花見の歴史

古来より日本人に愛されてきた桜。日本には古くからヤマザクラ、エドヒガン、オオシマザクラといった野生種の桜が存在し、人々の目を楽しませてきました。
奈良時代の花見といえば中国から渡ってきた梅の花がメインでしたが、平安時代になると桜の人気が上昇していきます。奈良時代の「万葉集」には桜を題材にした歌が44首あり、平安時代の「古今和歌集」では70首詠まれています。
当時の桜の楽しみ方といえば、貴族や文化人といった一部の人々が「一本の桜を愛でつつ歌を読む」のが主流でした。そして歌を詠むために、花見の宴が催されるようになっていきます。
江戸時代には「庶民の娯楽」として花見文化が定着

現代のように、たくさんの桜が咲く名所にでかけて、飲んだり食べたりする花見スタイルが主流になったのは江戸時代のこと。
3代将軍・徳川家光、8代将軍・徳川吉宗の頃に多くの桜が植えられ、特に吉宗は「庶民の娯楽になるように」と花見スポットを整備・開放したことから、老若男女誰もが気軽に楽しめる文化としてお花見が定着していきました。
江戸時代に人気だった「桜の五大名所」とは?
江戸時代を代表する五大名所としてよく名前があがるのは、上野の東叡山、飛鳥山、隅田川堤、御殿山、小金井桜。そのほか「浅草寺」付近や新吉原も桜の名所でした。
ここからは、江戸庶民に愛されたそれらの花見スポットを、詳しくご紹介していきます。
上野 東叡山:寛永寺の境内は江戸随一の桜の名所(現・台東区)

江戸の花見といえば、筆頭は“上野の山”。現在は「上野恩賜公園」が広がり文化施設が多数点在するのこのエリアは、「東叡山 寛永寺」(以下、寛永寺)の境内でした。
徳川家康、秀忠、家光という3代将軍の帰依を受け、寛永寺の創建を任された天海大僧正は、江戸庶民が参拝とともに行楽を楽しめる場所にしようと私費まで投じて境内を整備したといいます。
そのひとつとして奈良県の吉野山からヤマザクラを移植し、春にはお花見を楽しめるよう境内を庶民に開放しました。
寛永寺は将軍家ゆかりの寺院ということもあり、一説によると飲酒はもちろん、三味線や太鼓などの鳴物は禁止。花見の時間帯も制限されていたそうです。

歌川広重の「名所江戸百景 上野清水堂不忍ノ池」には、京都の清水寺を模した「清水観音堂」付近の桜や、不忍池(しのばずのいけ)、くるりと円を描く「月の松」、そして観音堂の上からを景色を眺める人々が描かれています。
【上野 東叡山の今】「上野恩賜公園」に約800本の桜が咲き誇る

今もなお、“上野の山”こと「上野恩賜公園」は東京を代表するお花見スポットです。園内には早咲きから遅咲きまで約50品種の桜があり、長い期間花を楽しめるのも魅力です。

約800本の桜が並ぶ大通りは見応え抜群で、満開の時期には花見客で大にぎわい。

混雑を避けたい親子は、「不忍池」沿いの桜がおすすめ。大通りよりやや人が少なく穏やかな時間を過ごせます。「不忍池辨天堂」を彩る桜が、江戸の情緒を感じさせてくれますよ。
2025年3月18日(火)~4月6日(日)には「うえの桜フェスタ」を開催中。日本と世界のグルメを満喫できるほか、ステージイベントやスタンプラリーが行われます。親子で楽しい春の一日を過ごしましょう♪
■上野恩賜公園
所在地:東京都台東区上野公園5-20
桜の見頃:例年3月中旬~4月上旬
関連イベント:【うえの桜フェスタ】2025年3月18日(火)~4月6日(日)
アクセス:【電車】①JR各線、東京メトロ各線「上野駅」、または京成線「京成上野」から徒歩で約2分
飛鳥山:徳川吉宗が整備した江戸の行楽地(現・北区)

北区王子にある飛鳥山は標高25.4mの小さな山。江戸時代に8代将軍・徳川吉宗が桜を植えて庶民に開放し、誰もがお花見を楽しめる“江戸のリゾート地”として栄えた場所。
江戸の中心からは少し離れていたものの、上野のように規制が厳しくなく、庶民は飲んだり鳴物を響かせたりして存分に春を謳歌できたようです。
江戸後期には「海老屋」や「扇屋」といった江戸の料理屋番付上位に名を連ねる有名店が立ち並び、多くの人々でにぎわいました。

当時の飛鳥山では、厄除けなどを祈願して崖の上から素焼きの小皿を投げる「土器(かわらけ)投げ」という遊びが流行。特に花見の余興として行われていたといいます。錦絵にも、女性や子供が土器投げに興じる様子が描かれています。
1883年(明治16年)に飛鳥山の崖下に上野~熊谷間の鉄道が開通したため、土器投げは中止せざるを得なくなりました。
【飛鳥山の今】ファミリーに人気の「飛鳥山公園」

明治時代になり、1873年(明治6年)には「上野公園」(現・上野恩賜公園)、「芝公園」、「浅草公園」、「深川公園」とともに日本最初の都市公園「飛鳥山公園」が生まれました。
今も公園内には約600本の桜があり、例年3月下旬から4月中旬にかけてたくさんの花見客が訪れます。「上野恩賜公園」ほど混み合わず、江戸時代と同様、比較的のんびり桜を堪能できるのが魅力。
遊び場や3つの博物館もあり、家族みんなで充実した一日を過ごせます。

広場に面したカフェも親子に人気です。テラス席でお花見をしたり、テイクアウトを利用してピクニックしたりと思い思いに楽しめますよ。
ボンボリの灯りによる幻想的な夜桜も見どころです(シーズン中21時まで)。
■飛鳥山公園
所在地:東京都北区王子1-1-3
桜の見頃:例年3月下旬~4月上旬
アクセス:【電車】JR京浜東北線「王子駅」中央口または南口から徒歩すぐ/東京さくらトラム(都電荒川線)「飛鳥山駅」「王子駅前駅」から徒歩すぐ/東京メトロ南北線「王子駅」一番出口から徒歩で約3分
隅田川堤:向島から千住まで続く桜並木(現・墨田区、台東区)

規制が多い上野や、江戸の中心地から遠い飛鳥山と比べ、もっとも身近で気軽な場所として親しまれたのが隅田川沿いの桜。江戸の風俗全般を解説した「絵本江戸風俗往来」によると、「花見の場所数ある中に、墨堤の花見に上越す賑わいはなし」というほど、にぎわっていました。
現・墨田区向島の「三囲(みめぐり)神社」から「木母寺」(もくぼじ)まで隅田川沿いに続いていた桜は、江戸4代将軍・徳川家綱の命で植えられたのが始まりです。
さらに8代将軍・徳川吉宗が、1717年(享保2年)に桜100本を、1726年(享保11年)に桃、柳、桜を合計150本植え、庶民の憩いの場として開放しました。

花見の時期には茶屋が並び、今も花見シーズンには行列ができる「長命寺桜もち 山本や」や「言問(こととい)団子」も創業。江戸っ子たちは団子や酒を楽しみつつ、春を謳歌しました。
隅田川堤は2025年NHK大河ドラマ「べらぼう」の舞台である吉原(新吉原)からもすぐ近く。渓斎英泉の錦絵「花見帰り隅田の渡し」には、芸者衆が渡し船に乗って花見に興じる様子が描かれています。
すぐ近くの浅草寺や吉原も桜の名所

近くにあった吉原と浅草寺も桜の名所として知られ、隅田川堤はそれらの桜も一緒に楽しめる好立地でした。
吉原遊郭のメインストリート・仲之町には開花シーズンにだけ桜が植えられ、花が終わると撤去されたといいます。

「浅草寺」の裏手には、千本桜と呼ばれる吉原の遊女が寄進した桜がありました。「浅草寺桜奉納花盛ノ図」には、おしゃれをして花見に繰り出す女性たちの姿が生き生きと描かれています。
【隅田川堤の今】隅田川両岸の「隅田公園」に桜が咲き誇る

現在、隅田川の吾妻橋から桜橋までの区間には、両側約1kmにわたって桜が植えられ、“日本さくら名所百選”に選定されています。

東京スカイツリーを背景に咲く桜や、川面に映る“逆さスカイツリー”と桜のコラボも見どころのひとつ。屋形船でのお花見も江戸情緒があり人気です。
2025年3月16日(日)~4月6日(日)は台東区浅草側で「隅田公園桜まつり」、3月16日(日)~4月13日(日)の期間は墨田区側で「墨堤さくらまつり」が開催されるので、ぜひ親子でおでかけしてみてください♪
■隅田公園
所在地:
【台東区側】東京都台東区今戸1-1、浅草7-1、花川戸2-1、花川戸1ほか
【墨田区側】東京都墨田区向島1・2・ 5
桜の見頃:例年3月下旬~4月上旬
アクセス:
【台東区側】東京メトロ銀座線、東武伊勢崎線「浅草駅」から徒歩で約10分
【墨田区側】都営浅草線「本所吾妻橋駅」から徒歩で約6分
関連イベント:
【隅田公園桜まつり】2025年3月16日(日)~4月6日(日)
【墨堤さくらまつり】2025年3月16日(日)~4月13日(日)
御殿山:ペリー来航で消えた幻の名所(現・品川区)

現在の品川区北品川にあった御殿山は、品川宿を見下ろす丘に徳川家康が「品川御殿」を建てた場所。歴代将軍の鷹狩りの休憩所として利用され、徳川吉宗の時代に花見の名所として整備されました。
この一帯は、芝の「増上寺」から鐘の音が聞こえ、海を行き交う船が見える風光明媚な場所。春には花見、初夏には海岸で潮干狩りも楽しめる一大行楽地でした。
しかし1853年のペリー来航を受け、幕府はこの見晴らしのよい丘に砲台を築くことを決定。御殿山は切り崩され、さらにその後の開発によってかつての花見の名所は縮小されていきました。
【御殿山の今】江戸の面影を今に伝える「御殿山庭園」

現在の品川区には御殿山という町名はありません。しかし小学校や施設、町会、通りなどの名称に使われ、今も歴史の名残が感じれられます。
ホテルや住居、オフィスなどからなる複合施設「御殿山トラストシティ」内の「御殿山庭園」は、江戸時代の面影を今に伝える日本庭園です。2025年3月17日(月)~4月6日(日)には「御殿山さくらまつり」が開催され、桜のライトアップや、御殿山花見の湯(足湯コーナー)、しゃぼん玉ショーなど親子で楽しめる催しが盛りだくさん。
庭園南側の御殿山通りもおすすめ。桜にあふれた通りを歩きながら、江戸時代のお花見に思いをはせてみませんか?
■御殿山庭園
所在地:東京都品川区北品川4-7-35
桜の見頃:例年3月下旬~4月上旬
アクセス:【電車】京急本線「北品川駅」から徒歩で約5分/JR各線「品川駅」から徒歩で約10分
関連イベント:【御殿山さくらまつり】2025年3月17日(月)~4月6日(日)
小金井桜:文人墨客や庶民に愛された玉川上水堤(現・小金井市、小平市、武蔵野市、西東京市)

江戸の中心部から離れた小金井も、江戸っ子に愛された五大桜の名所のひとつ。
徳川吉宗による新田開発の際、新田を管理していた川崎平右衛門らが、小金井橋を中心とする玉川上水の両岸約6kmに桜を植えました。植えられたのは、奈良県の吉野山と茨城県桜川から取り寄せたヤマザクラです。
見事に成長した桜並木は「小金井桜」「御上水桜」と呼ばれて話題を呼び、1804~1844年の文化・天保年間にはたくさんの文人墨客が桜を見に訪れました。浮世絵師・歌川広重も小金井桜を題材にした作品を残し、庶民の間でも江戸近郊の花見スポットとして有名に。
江戸の中心部からは約30kmと遠いため、多くの人は泊りがけで花見を楽しんだといわれています。
【小金井桜の今】「小金井公園」南側に桜並木を再整備

明治末から大正にかけての調査・研究では、小金井桜の桜並木から60数種におよぶ天然変種が発見され、日本有数のヤマザクラの一大集積地であることが明らかになりました。
1924年(大正13年)には「小金井(サクラ)」として、奈良の吉野山、茨城の桜川とともに国の名勝に指定されています。

しかし交通量の増加や生育環境の悪化、木の老齢化により、近年は樹勢が衰え枯死や倒木が相次いでいる状況です。
そこで小金井市では小金井桜の再生・復活へ向けた事業をスタート。市民とともにヤマザクラの苗木を補植するなどの活動を続け、2025年現在、「小金井公園」の南側・小金井橋〜梶野橋間で再生が進んでいます。
自然種のヤマザクラは1本1本の色合いが異なるのが魅力。「小金井公園」でも多様な桜を観賞できるので、地元の人たちが守り続けてきた桜並木とあわせて散策してみてはいかがでしょうか。
【参考】名勝小金井(サクラ)復活プロジェクト(小金井市公式サイト)
■名勝・小金井(サクラ)
所在地:東京都小金井市桜町、関野町ほか
桜の見頃:例年3月下旬~4月上旬
アクセス:【電車】「東小金井駅」からcocoバスで約4分、徒歩で約20分(関野橋)
おしゃれをしたり、舟に乗ったり、お団子を食べたりと、さまざまなスタイルでお花見を楽しんでいた江戸時代の人たち。この春は、江戸町人になった気分で五大桜の名所めぐりを楽しんでみてはいかがでしょうか。
記事を書いた人
雨宮あかり
「いこーよとりっぷ」エディター/食べること・飲むこと・音楽が大好きなママ編集者。世界中の音楽フェスを体験すること&ベルギービールの醸造所めぐりが夢です♪ 特技はアロマセラピートリートメントです。
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